2024年4月5日金曜日

BOYS ON THE RUN (2024-03-10)

最近なにか面白い本は読みましたか? 鍼の先生に聞かれ、咄嗟に答えが浮かばなかった。色々と読んでいるので即答できない。急にボールが来たので(QBK)状態になる。ビートたけしの本をいくつか読んだと答えたが、他にあったはず。先生が私の身体から鍼を抜き終わり、退室した後に、着替えながら思い出した。料金JPY6,000を支払いがてら、私は言った。面白い本、ありましたよ。人間の自己家畜化に関する本を読みました。ジコカチクカって、自分の自己に、動物の家畜に化けるですか? そうです。犬や猫と同じように人間も自分たちのことを家畜化しているんです。ここ数百年の急速な社会変化によって、人間の気質、身体に変化が表れているんです。性格は穏やかになりました。男性らしさ、女性らしさが薄れ、全体的に中性的になりました。世の中から暴力が減り、安全になり、人間は長寿を手に入れました。でもその代わりに人間の自由と動物性が損なわれました。そして社会で成員として認められるための条件が厳しくなりました。適応するのが難しくなりました。昔であれば普通に生きることが出来ていたであろう人でも、特別支援教育や精神医療による矯正の対象になりました。そこにおける人間はもはや資本主義の道具です。今の人間が置かれている環境は、野生よりも動物園にいる動物の環境に近いのです。
[…]典型的中世人が[…]現代にやって来たら[…]その長期的展望を欠いた考え方は思慮が足りないとみなされ、その残酷さや衝動性や荒々しい感情表出はたちまちトラブルの種となり、刑務所に入れられるか、精神疾患として治療を受けなければならなくなるか[…](熊代亨、『人間はどこまで家畜か』)
数百年前なら良い仕事に就き、尊敬され、結婚し、子を残していたであろう人が、現代においては精神疾患に該当し、なかなか良い仕事も見つからず、生きていくことに疲弊していることはしばしばあるように思われるのです(熊代亨、前掲書)
その話は儒教と道教の違いに繋がる、と先生は言った。人間のありのままの動物性や自由を大事にするのが道教で、みんなを同じように型にはめるのが儒教。面白そうな本だ、チェックしてみる、と先生。私が読み上げた書名を手元の紙に書いていた。私は(先生も)本の説明に気を取られ、次の予約をするのを忘れたまま外に出た。

老紳士というカテゴリーの男性たち(2024年現在)は一般的に、公衆の洋式便所で便座を下げたまま立ちションをする。そう、便座に小便がかかる。後から誰かがそこに座る? 彼らは気にしない。彼らの目には罪悪感、背徳感が一切ない。それが普通(normal、正常)だと思っている。最初は例外的な異常者の行動だと思っていたが、どうやらそうではないらしいことに私は気付いた。あの世代の男性たちにとってはごくカジュアルな行為なのだ。(小便で言うと、私が小学生くらいの頃、日本ではその辺のストリートで立ちションをするのは普通のことだった。)便座に小便をかける老紳士たちは私から見ると好きな場所で放尿、脱糞する獣のようだが、自己家畜化の度合いが我々の世代よりも弱いという意味で実際に動物に近いのだろう。しかしながら、私が彼らに向ける白い眼が、動物園で檻の中にいる動物、飼い主によくしつけられたペットの視点だと考えると、本当に自分が正しくて彼らが間違っているのか、迷いが出てくる。

2012年8月19日(土)、私は当時の親友と二人で、秩父の両神山を登った。登山の終盤、熊が全力疾走で上から転げ落ちるように私に向かってきた。人生で最も強く死を意識した瞬間である。が、それはさておき。老淑女が一人で切り盛りする近くの宿に前泊した。宿に着くと出迎えてくれた老淑女は、開口一番、私たちが女なのかと聞いてきた。いや男ですと答えると、男なのか…こんなに優しそうなのに…的なことを言って何やら感心していた。当時は意味が分からなかった。お歳を召されて(具体的には覚えていないが相当なご高齢だった)目がちゃんと見えていないのカナくらいに思っていた。『人間はどこまで家畜か』を読んだ今では意味が分かる。おそらく実際に彼女の目から見て我々は女のように見えたのだ。人間の自己家畜化が進み、見た目からして中性化しているのだ。他人と接点の少ない山奥にお住まいの彼女はなおさらこの変化を感じ取りやすかったのだろう。

『非国民な女たち』(飯田未希)という印象的な本がある。戦時中に奢侈やアメリカかぶれの罪を着せられ国家的なバッシングの対象となったパーマネント。圧力におとなしく従わず、パーマネントを求め続けた女性たち。私はコヴィッド騒ぎの真っ最中(2020年11月)にこの本を読んだのだが、自粛や不要不急といった言葉で特定の業種が槍玉にあげられて叩かれる構図がコヴィッド騒ぎとまったく同じで唖然とした。『非国民な女たち』で描かれている時代、日本で髪にパーマネントをかけていたのはもっぱら女だった。当時の基準からすれば、今日の13時から予約した美容室でヘア・カットのみならずパーマネントをかけた私は女のようだと、女でも思うことだろう。

ポーター・クラシックの高価なデニム・カヴァーオールを纏ったD氏と、下北沢駅前で合流。氏の導きで、洒落たサテン。カフェではなくサテン。こだわりのある個人店にもかかわらず接客に嫌みがない。D氏はブレンド、私レーコー。D氏ブレンドお代わり。この後BLUEGOATSさんを一緒に観ませんかと誘ってみるも、渋い反応。その後、D氏オススメのカムイで夕食。食券制。担々麺とエビ焼売が売りらしく、店名にも記されている。私は麻婆豆腐と米とミニ担々麺のミール、D氏はあんかけかた焼きそばと小さい何かのミール。食いながら眺めるBLUEGOATSさんのYoutube配信。メンバーのダイナマイト・マリンさんがフル・マラソンに挑戦している。朝9時に埼玉の春日部を出発し、下北沢がゴール。そのまま下北沢の会場で公演に出演する。間に合わなかったら氏を欠いたまま公演が始まる。ダイナマイト氏は集団の中でも運動は苦手な方。多少の準備期間があるとはいえ、いきなり42.195kmを走り切るのは難しそう。出来たらスゴい。そう思っていたが、順調なペースで距離を伸ばしていく様子が配信されている。素直にスゴい。私は週に3回くらい5km走っている。これまでの人生で10km以上を続けて走ったことはない。だから仮にマリンさんが完走出来なくとも、20km、30km走れたら十分によくやったと思える。でも、何のために? 何でマラソン? という疑問は残る。D氏に会場前まで案内していただき、別れる。

下北沢MOSAiC。受付で予約時のニック・ネームを告げる。ドリンク・チケットとJPY600を交換。受付の先に座っている紳士二人組に声をかけられる。マリンさんの生誕企画。ペンライトを渡される。バー・カウンターでジン・トニックを注文。(鍼をやった当日はお酒を最後まで飲まないのが望ましいが、一応5時間以上経過したら飲むことは可能と先生に言われている。)容器がプラスティックではなくグラスだった。地下のフロアにグラスを戻す場所はない気がする。その場で飲み干す。19時開演だが17時から開場している。随分と早いのは、フロアでマリンさんのマラソンのパブリック・ヴューイングが開催されているから。入って右がステージ、正面の壁に巨大スクリーン。そこにYouTube配信と同じものが投影されている。私が入った18時過ぎにはだいぶ人で埋まっていて、どこに行ったらいいのか戸惑う。やや気まずい。すいません、すいませんってペコペコしながらスペースに進んでいく感じ。スクリーンに向かって左の後ろから2列目くらいの場所につく。ステージに置かれた椅子にチャンチーさん、ほんま・かいなさん、ソン・ソナさんが座っているが、ヘッズはスクリーンや手元のスマ・フォに集中している。徐々に近づく開演時間。順調にキロ数を刻むマリンさん。下北沢界隈まで到達していることが分かり、生まれる拍手。開演準備のためスクリーンが仕舞われ、メンバーさんたちが捌け、我々は回れ右するような形でステージに向かされる。誰も前に行こうとはせず、押し合いへし合いの混乱もなく、行儀よく。投げ銭公演のときもそうだったが、BLUEGOATSさんのヘッズは整然としていて控えめな印象。

無事に開演までに会場にたどり着くマリンさん。ステージに現れた氏に抱きついて一緒に倒れ込むメンバーさんたち。暖かい拍手に包まれるフロア。マリンさんによる感動のスピーチ。裏方、メンバー、ファンへの感謝。一方で、この企画に対する批判の声。YouTubeでメンバーを攻撃するコメントを投稿するヘイターたち。そのような人々からみんなを自分が守る、自分が戦う、という決意を表明していた。だからみんなは私たちだけを見てほしい、と。正直に言うと、私は彼女の言葉に入り込み切れなかった。私はBLUEGOATSさんの現場に来るのがまだ2回目。存在を知ってから2ヶ月も経っていない。よく知っているわけではない。マリンさんが42.195kmを走りきった後に真っ先に毒づきたくなるほど目の敵にしているその相手が何なのか、過去に具体的に何があったのか、ピンと来ない。その場にいるヘッズがおそらく共有しているであろう何かを私が共有できていないであろうことは分かった。いずれにせよ、フル・マラソンを完走するという偉業を成し遂げた直後、情念のこもったスピーチ、その流れで始まった公演。メンバーさんもヘッズも気持ちが入っていた。異様な雰囲気があった。序盤はマリンさんの息が整っていなくて、歌が乱れていたが、それがまた味になっていた。ただ、コンサートは40分足らず。もちろん今日に関してはマリンさんがフル・マラソンを走った直後という特殊事情がある。あの状態で一曲でも参加できるのはスゴい。ただ、単独公演をやるのであれば、せめて60分はしっかりと魅せてほしい。(前の投げ銭公演も30分くらいだった。)出来れば80-90分の尺で魅せてほしい。私の感覚ではそれがフル・サイズのコンサートだ。

私は別にアイドル・オタクではないが、せっかく現場に来たのだから一度は特典会に参加してみよう。私はBLUEGOATSさんに関しては明確に誰かの支持者ではなかったのだが、あえて言うならチャンチーさんは気になる存在だった。YouTubeでも、現場でも、集団の中で一番目で追いたくなる存在。衣装が一人だけハーフ・パンツで脚を見せてくれているし。ちょっと裾がめくれてエッチだし。終演後、チェキ券の購入列に並ぶ。チェキ券を一枚くださいと言うと、どのチェキ券ですかと係員に聞かれる。チャンチーさんのをと言うと、そうじゃない的な反応。どうやら撮るだけのチェキ券とお話もできるチェキ券の2種類があるらしい。JPY2,500。チェキのカメラが用意されていて、てっきりそれで撮るのかと思いきや、列の先頭にいた紳士がご自身のスマ・フォで撮ってもらっている。訳が分からなくなった。後ろの紳士に尋ねたら優しく教えてくれた。曰く、このスマ・フォでと頼んだらそれで撮ってもらうことが可能。フィルム代がかからない分、3枚くらい撮ってくれる。紳士の言う通りにしたら3枚撮ってくれた。事前に何の説明もない。(どこかに書いてあったのだろうか? 仮に書いてあったにせよ現地で説明するのが普通の感覚だと思うが…。)自分で飛び込むなり周りに聞くなりして切り拓かないといけない。KissBeeさんでも感じることだが、地下アイドル界の特典会における説明の不足には本当に痺れる。いきなりポンと単騎で飛び込んでくる私のような存在は基本的に想定されていないのだろうか。

(以下、チャンチーさんとの会話の概要。記憶。正確な書き起こしではない。)

私:初めまして
チャンチーさん:えー! 初めて? ありがとう! (ポーズ)何にしようか…とりあえずピースして(1枚目)
私:スタートュ(YouTube動画のイントロにおける合い言葉)が好きなんで…
チャンチーさん:あ、そうなの?(2枚目、スタートュのポーズ)
チャンチーさん:ハート作って(3枚目)

チャンチーさん:ねえ、それ何なの?(私のiPhoneケース裏に入れてあるNHK撃退ステッカーを指して)
私:あ、これ…NHKの集金人が来たら、ココに電話したら追い払ってくれるの
チャンチーさん:…尖りすぎじゃない?
私:いいかな、って思って…
チャンチーさん:(お、おう…的な反応)

チャンチーさん:動画? 何で知ってくれたの?
私:バキ童コラボで知って、それでアオヤギ・チャンネルにはまって、動画ほぼ全部観て…
チャンチーさん:へえそうなんだ!
私:あー、で、オレ池袋に住んでて
チャンチーさん:えー!
私:あのチャンネルすごい池袋が出てくるでしょ
チャンチーさん:やばい、(場所が)バレちゃう
私:大体分かるよ。動画で、赤札堂で買い物してたでしょ
チャンチーさん:赤札堂(笑)
私:今は違うんだけど、赤札堂の先の辺りに住んでたこともあるし

チャンチーさん:名前なんていうの?
私:しいてき、です
チャンチーさん:どうやって書くの?
私:アルファベットで、c-t-e-k-iって
チャンチー:ああそれでしいてきって。覚える
私:あ、ありがとうございます
チャンチー:ありがとうね(私の右手を握ってくれる)

2024年2月23日金曜日

BLUEGOATS東京公演〜投げ銭ライブ〜 (2024-02-18)

バキ童さんことバキバキ童貞さんことぐんぴぃさん属する春とヒコーキさんとのコラボ動画でBLUEGOATSさんという集団の存在を知ったのが1月16日(火)。面白かったので彼女たちのチャンネル(アオヤギチャンネル)の他の動画も観てみた。2週間で80本くらいの動画を視聴した。カラオケで喘ぎ声だけで歌い機械採点で90点以上を取るまで帰れない、かっぱ寿司に河童姿で行って店のパフェが売り切れるまでパフェだけを食べ続ける、鬼が河童姿になって全国規模の鬼ごっこをする、メンバーさんの一人が一週間のホームレス体験をする、メンバーさんが知らない人にいきなりバケツで水をかけられる、街で声をかけてきたファンがその場で嬉ションを漏らす、メンバーさんが寝ている間に家に合い鍵で忍び込み洗濯機を盗みメルカリに出品する(そして売約する)、目隠しをして知らないオジサンにキスされる、他社のプロデューサーに打ち合わせと称して居酒屋で二人っきりにされ執拗にラブ・ホテルに誘われる等々、素晴らしい完成度の企画が目白押し。最近の動画も本当に面白い。(私がこのチャンネルにハマったのは単純に動画がとても面白いからだが、一つ付け加えるなら池袋で撮影していることが多いからだ。BLUEGOATSさんの事務所は池袋にある。正午から終電の時間までそこに出勤するのが彼女たちの基本的な勤務形態らしい。動画には池袋の風景が頻繁に出てくる。事務所の詳しい住所は公開されていないが動画に出てくる風景で何となくエリアの察しはつく。)笑えない話もある。バキ童さんとのコラボ動画(+もう一つの動画)のURLを誰かがチャンチーさんが在籍していた大学のホームページのお問い合わせフォームに貼り付け、こんな奴と同級生なのはイヤだと書いて投稿した。このスニッチが原因でチャンチーさんは大学を退学させられたらしい。それを曲にしたのが『私は大学を辞めた、友達のせいで』。なんて言われたら興味をそそられる。聴いてみたら意外と(と言ったら失礼だが)エエ曲やん。同曲を含むEPをSpotifyで再生したら3曲ともよくて、そのまま何度も繰り返して聴いてしまった。BLUEGOATSさんの曲はリリックをすべてメンバーさんが自ら書いている。YouTubeでお人柄に親しんだ上で、彼女たちが自作したリリックだと知って聴く曲は鳴りが違う。YouTubeにせよSpotifyにせよこれだけ無料で楽しませてもらっているので一度は現場に行ってみたいし何なら特典会でチェキでも撮ってみたいなと思うようになった。3月10日(日)の下北沢公演のチケットは購入した。この週末(2月17日-18日)には青山と新宿で投げ銭ライブをやるとのこと。これといった予定がなかったので足を運んでみることにした。

昨日の青山は12時開演、今日の新宿は12時半開演。12時だと早すぎる。昼メシを食うタイミングを逃しかねない。新宿で12時半開始なら新大久保で昼メシを食ってから行っても間に合うだろう。そう考え11時半から淘湘記で高菜毛豆肉沫JPY880。歩いて向かう新宿Marble。12時20分頃に着く。入口の階段を下りようとするとこちらを向いて立っている紳士と目が合う。会釈してくるので何となく返す。BLUEGOATSですか? はい。あ、ありがとうございます。そこの階段を下りてドリンク代をお支払いいただきご入場ください。分かりました。あの紳士が事務所(株式会社TEAF)社長の三川氏だろうか? YouTubeで聞き覚えのある声な気がする。一瞬の対面だが人当たりのよい人物に見えた。JPY600。フロアはもう大方埋まっている。中央から右にかけては一番後ろまでほぼ入る余地はない。左側はまだ空間がある。最前の左側に長方形の中にバッテンの形でテープが貼られた場所がある。公式カメラ用の場所だった。その後ろに女性二人組(この二人以外、パッと見て女性客は見当たらなかった)、その女性たちの後ろに私が立つ。この公演はYouTubeで生配信される。昨日の公演も配信されていて、私は夜に観た。撮影担当者の紳士は、後ろにいる我々に向けて、邪魔だったら叩いて知らせてくれ的なことを開演前に言ってきた。腰が低く感じのいい人だった。最前中央付近に目をやると、昨日の配信で見覚えのある帽子を被った紳士がいた。昨日は最前中央、今日は二列目の中央。おそらく毎度、決まった面子が観に来るのだろう。「大体 毎回 いつも同じメンバーと再会」(RIZE, “Why I'm Me”)なのだろう。キャパ150人の会場で開演10分前にふらっと入れる動員能力なんだからそりゃそうなるわな。そういえば、2017年に特典会でファンとラップ越しにキスをして問題になったTHE BANANA MONKEYSという地下アイドルがいた。私は当時Twitterで騒ぎになっていたのを何となく覚えている。その集団が活動休止し、改名したのがBLUEGOATSらしい。もっともラップ越しキスをやっていた当時のメンバーさんは一人も残っていないようだ。今のBLUEGOATSは前身集団の炎上商法は引き継がず、真っ当な路線で売れるのを目標にしている。掲げているのが結成から3年以内の横浜アリーナ公演。その期限が今年いっぱい。(より正確に言うと、2021年8月7日にTHE BANANA MONKEYSが活動休止、2021年11月7日にBLUEGOATSのデビュー公演が行われた。デビュー公演を始点にすると3年後は2024年11月7日になる。)年内に横浜アリーナに立つだの、横浜アリーナを満員にするだのと、折に触れてメンバーさんたちは決意を口にする。私がこの集団を知って一ヶ月しか経っていないし、現場に来たのは今日が初めてだ。彼女たちのことを十分に知っている訳ではない。しかしそれを踏まえた上でも、現在地と横浜アリーナ満員との間には大きな隔たりがあるのは明らかだ。細かいスキルがどうのの前に、この新宿Marbleに集まった百人程度?の客の乗り方、乗せ方も定まっていないように思えた。先述の春とヒコーキさんとのコラボ動画でBLUEGOATSのコンサートではコールやミックスは出来ないと聞いていたが、かといってその代わりとなるノリが明確にあるわけではない。地下アイドル界では定番のオタクによるキモい絶叫がない。オタクからの発声自体がほとんどない。アンコールですら手拍子のみ。初心者でも取っつきやすい反面、熱狂もない。じゃあおとなしく聞き入っていればいいのかというと必ずしもそうではなさそうで、メンバーさんはどうやら盛り上げたがっている。一曲目でチャンチーさんが踊れー!と叫んでいた。それがフロアの雰囲気と何となく噛み合っていない。ウチらはカッコいいグループだから地下アイドル現場のギャーギャー騒ぐノリはノーセンキュー(苦笑)的なスタンスなのかと思ったが、そこに振り切れていない感がある。演者側も、ヘッズ側も、どうしたいのか、どうしたらいいのか、やや迷いがあるように思えた。

一般的な地上アイドルでも地下アイドル(ライヴ・アイドル)でもない何か。BLUEGOATSさんという集団を何の箱に入れればいいのかが私には分からない。アイドルを称してはいるが、私の知っているアイドルとはちょっと違う。掴みどころのなさ。誰か一人を決めて“推す”ような集団なのか? BLUEGOATSさんが参加しているのはその競技でいいのか? 違うような気もする。彼女たち、運営、ファンのそれぞれが何を求めているのか、現時点の私ではピンと来ていない。だが、それが悪いと言いたい訳ではない。それこそがこの集団の面白さ、魅力なのかもしれない。曲は真っ当で興味深い。メンバーさんたちが書いたリリックをミックスやコールでかき消すのはたしかにもったいない。昨日の青山公演を配信で観たときにも思ったが、歌唱面ではダイナマイト・マリンさんとほんま・かいなさんが引っ張っている。他の二人とは差がある。特にソン・ソナさんは音程が取れていなくて音がフラットに近いときがある。ダンスはチャンチーさんが目をひく。身体のしなやかさ、笑顔。チャンチーさんは目で追ってしまう。全員から、ステージで自己を表現することに対する情熱を感じた。その姿は清々しかった。体力的には向上の余地があるように感じた。30数分間のコンサートでだいぶ出し尽くした感、走り切った感が出ていた。コンサートは楽しかったし、また観たいと思った(実際に3月10日に行くことが決まっている)。でも、今年中に横浜アリーナ? 満員? そのヴィジョンには首を傾げてしまう。動員能力的にも、スキル的にも、距離が遠すぎる。単純に楽曲も足りない。Spotifyにある曲をすべて足しても約61分しかない(他にも曲はあるっぽいが)。(ただでさえ曲が少ないのに、昨日と今日で投げ銭がJPY300,000を超えなければ新曲をお蔵入りするという罰を設定していた。誰も得をしない。意味不明だった。結果として目標金額は達成したのでよかった。)実務的な話をすると、今年中に横浜アリーナで公演をする場合、現時点で日程の目星くらいはつけておかないと間に合わないのではないだろうか。それは実際にやっているのだろうか? 夢ではなく、具体的な計画として進めないと間に合わない段階に来ているはず。困惑を隠せない私。もちろんメンバーさんも運営もファンも分かっているはず。その認知的不協和を皆さんはどう解消しているのだろうか? 私の中でずっとそのモヤモヤが残っている。期間を区切って解散させるための口実だとしか思えない。期限を決め、儚い夢を見る。達成できなかったら散る。それはそれで美しいが。終演後、係員の若い女性たちが箱を持ってステージに立つ。来場者は各自が金額を判断し、思い思いの金額を箱に入れる。私はJPY2,000を入れ、会場を後にした。私は知らなかったのだが、どうやらこの後に特典会をやっていたらしい。

2024年2月22日木曜日

篠原ののか生誕祭~ののか20歳だってよ~ (2024-02-05)

鶏もも肉600g程度を適当な大きさに切る。塩とコショウを揉みこんでしばらく放置。フライパンに油を少し敷く。点火。鶏もも肉を並べる。焼き目をつける。皮の方を重点的に。頃合いを見て肉を適当な皿に引き揚げる。フライパンに刻んだニンニク(2片)とほどほどに細かく刻んだタマネギ(中くらいを2個)とスライスしたマッシュルーム(2パック)を入れ、いい色になるまでかき混ぜながら弱火で炒める。さっきの鶏肉とトマト缶を二つ開けてそこに加える。コンソメのキューブを二つ。ローレルの葉っぱを一枚。エルブ・ド・プロバンスとパスタ&ピザのスパイス・ミックス(共にマスコット社)を適量。トマトを崩して全体を混ぜながら、いい感じの質感になるまで火を入れる。塩とコショウで味を調整する。ローレルを出して捨てる。コレでソースが完成。4食分。お好みのスパゲッティ(私の場合は栄養面を考え全粒粉)を茹でてフライパンに移す。そこにソースをかけて、火を入れながら混ぜ合わせる。ソースが麺全体に絡んだら皿に移す。お好みでハバネロ・ソース(マリーシャープス社)をかける。残ったソースは容器に入れ、熱が冷めてから冷蔵庫に保管する。(鶏もも肉を挽き肉に変えればミート・ソースになる。ミート・ソースをもっとおいしく作ろうと思えば他にニンジン、セロリ、赤ワインを使うなどやりようはあるが、かける費用・時間と味のトレード・オフになる。上記の作り方で十分おいしい。ミート・ソースの場合、チリ・パウダーを加えるとか仕上げにどろソースを少量だけ入れるのもいい。)引っ越しの一年半後に導入したガス・コンロで初めて私が作ったのがスパゲッティである。久しぶりすぎて細かい作り方を忘れていた。前回はタマネギが多すぎたので、反省を生かして改良した。うまく出来た。

ついこの間(9日前)ゆいチャンの生誕祭に行ったばかり。今日はののかチャンの生誕祭。正直、まだお腹いっぱいなんですケド。仕事的に月の中でも山場。そんな週の始まりの月曜日。気が重い。思うように進まない業務。膠着状態を明日に繰り越す。在宅業務を早めに切り上げラップトップを閉じる。スパゲッティを食い、洗い物を済ませ、濡れてもいい格好に着替え、家を出る。17時過ぎ。外は大雪。外出意欲を削がれるくらいの。これから積もっていくだろう。普通に考えるとおとなしく家にいるのが正解。しかしこの歳になってアイドルさんの現場に行く人間に普通という尺度は通用しない。行かないという選択肢はない。最寄り駅。当然のようにダイヤグラムは乱れている。渋谷駅着が予定よりも遅れる。Veats Shibuya。18時半開場、19時開演。会場に着いたのが18時40分。(途中のIKEAでソフト・クリームを食べようとしたら休業していた。あのJPY50のソフト・クリームは優れもの。しかもプラント・ベースっていう。)係員の紳士曰く、200番まで呼び出している。私はA170。もう入れる。かじかむ手。livepocketのチケット画面を見せるためにポケットから取り出すiPhone SE (generation 2)を地面に落とす。ストリートの修理業者に直してもらいながらこの電話を使い続けてもう少しで3年半になる。そろそろ機種を新しくしたい。だが、iPhoneに十何万円も出す気はない。

入場時に聞こえてきた係員同士の会話によると、前売り券分の呼び出しは200番で終わっていたようだ。最近の公演規模とチケットの売れ行きを見るに、この200人程度というのがどうやらKissBeeが安定的に集客できる人数のようである。今日のVeats Shibuyaは収容人数がGoogle検索によると700名。でも今日の客数でもスカスカという感じではなかった。仮に700人が本当に入ったら身動きが取れないと思う。適度に空間があって快適にコンサートを楽しむことが出来た。後ろの方でもまあまあよく見えたし、ステージが遠いとは感じなかった。いい具合の規模。小さすぎず、大きすぎず。皆さん、上着やカバンを足下やフロアの端っこに置いている。それが許される大らかさと治安の良さがある。篠原ののかチャンは大きな会場でコンサートをやって、遠すぎて全然見えなかったよと親に言われるのが夢だと涙ながらに語っていた。だが実際のところ、それを本当に成し遂げたいのであれば、もっと大きな事務所で活動をしないと非常に難しいのではないだろうか。小さすぎて見えないの基準をどこに置くかという問題はあるが、私が観客としてそれを感じたのは℃-uteさんの横浜アリーナ公演である。メンバーさんが豆粒のようだった。横浜アリーナの収容人数はGoogle検索によると17,000人。ふだん数百人を集めて興行をやっている会社が、どうやって急に1万人、2万人規模の公演を運営できるというのか。すべてにおいて勝手が違いすぎるだろう。私は業界関係者でも何でもないから内情は知らないけれども、競技が異なるんだと思う。大きけりゃいいっていうモンでもない。規模によってそれぞれの価値がある。(飲食店でたとえてみると私の言いたいことは分かると思う。)

コンサートを短く感じたが実際に短く、60分くらいだった(ゆいチャンのときは約90分だった)。本来起きるはずだったアンコールは、大雪の関係で時間を押すことが出来ないという係員氏の通達でやんわりと制止されてしまった。そこはちょっと残念だった。終演後の特典会。毎度ほんとうに辟易するのが、マジで何の説明もなく始まる。いま何をやっているのか(写メ? チェキ? セッション? それらの複数? あるいは別の何か?)、分からない。ゆいチャンの列で後ろにいた紳士(ゆいチャンのTO的な方)に、すみません、今って写メですか? と聞いてみたところ、たぶんいま時間ないんで、写メとかセッションとか一緒にやっちゃってると思いますと優しく教えてくれた。私は日系企業と外資系企業の両方で勤務経験があるが、特典会まわりの雰囲気や運用はHello! Projectが日系だとするとKissBeeは外資に近い。分からないなりに自分でやってみるなり周りに聞くなりして切り開いていかないと生存していけない。その代わり聞いたら教えてくれる。そしてガチガチに縛られるのではなくある程度の自由がある。時間が来たら終わりだと係員氏に言われるくらいで、会話の内容にいちいち聞き耳を立てられることはない。特典券2枚を使い、ゆいチャンと写メと30秒セッション。写メはNHK撃退シールでNHK党コール・センターの番号を指さしている立花孝志さんのポーズで撮影してもらった。セッションでは、

ゆいチャン:ねえそれ(私のiPhone裏に入れてあるステッカー)何なの?
私:NHK撃退シールって言って、
ゆいチャン:うん
私:NHKの集金人が来たらこの番号に電話したら追い払ってくれるの
ゆいチャン:へえ、そうなんだ。見たことないよ
私:たまに駅前で配ってるよ
ゆいチャン:どんな過激な思想の持ち主やねん

ゆいチャン:ののかみたいに(親から)愛されてみたいよね
私:ね
ゆいチャン:私の親は(生誕祭に)一回も来たことがないんだ
私:え、そうなんだ
ゆいチャン:病院の関係者でね。人がたくさんいるところに行けないとかで
係員氏:時間です

という感じだった。(前半の会話で記憶の容量を使い果たしたため、特に後半は正確な文字起こしではない。だいたいの内容はこんな感じだった。)間近で見るとゆいチャンはステージで見るよりもフィクション的な美しさがあってお人形さんのようだった。白人みたいだなと何となく思っていたが、そういえば今日の氏はカラ・コンを入れていたんだった(出典:氏のInstagramのストーリー)。目が青かった。それに言及できなかったのは悔いが残る。もちろん本日の主役、ののかチャンとも一枚撮りたかったが、氏には長蛇の列が出来ており、数十分はかかりそうだった。勢いを増していく雪。これは早く帰った方がいい。それに明日からの労働に備え、ゆっくり風呂に入って早めに寝たい。遺憾ながらののかチャンの列に並ぶのは回避し、足早に渋谷駅に向かう。ありがたいことに、いつも行っている近所の銭湯が通常通りに営業してくれていた。

2024年2月4日日曜日

藤井優衣生誕祭~デスドライブ~ (2024-01-27)

一平(いっぺい)氏:歌舞伎町すごい好きじゃないんだけどさ、新宿の。歌舞伎町の唯一好きなところはやっぱ大きい声で何か言っても誰も何も気にしないところなんだよな
ぐんぴぃ氏:でもマジでそう
土岡氏:これぐんぴぃも同じこと言ってた。歌舞伎町の
一平氏:えー?
ぐんぴぃ氏:本当にそう。歌舞伎町は(渋谷の)もっと上で、セーックス!って言っても誰も振り向かないの
一平氏:あー
土岡氏:まあもう、そういう街…
ぐんぴぃ氏:歌舞伎町がセックスの街だから、その、セックスって言葉が透明なの
一同:(笑)
(【シャッフル】完全同期のGパンパンダとトーク! 『春とヒコーキのグピ☆グパ☆グポ』、Nov. 14, 2023)

雑にモノで埋められて立入禁止になっている、かつてトー横キッズがたむろしていた一角。それでも付近に居場所を見つけて寝そべる浮浪者たち。パチ屋だかゲーセンだかの入り口で寝ていた浮浪者の腕を両手で掴んで立ち上がらせる警官。TOHOシネマズの上から顔を覗かせるゴジラをスマート・フォンで撮影する観光客たち。渾然と立ち並ぶ水商売の店舗。風俗。覗き部屋。無料案内所。そんな光景の一部にあるビルヂングの三階。新宿DHNoA(デノア)。未成年のメンバーさんもいるアイドル集団が公演を行う場所としては最悪の立地。いや、でもアイドル産業も大きな括りではこっちに属する。白か黒かの違いではない。濃淡の問題だ。アイドルさんにデレデレしながらその一方では水商売や風俗に従事する女性を見下し侮蔑するのは二重基準だ。気付いてくれ。推し、アイドル、特典会、レスといった用語による擬態を剥ぎ取った先にある自己矛盾(adidas履いたままJUST DO IT! by Moment Joonさん)、自己欺瞞。

1月19日(金)。20時半から始まった日本代表のどうでもいい試合に気を取られ、22時からチケットが発売したことを忘れていた。試合後に行った近所の銭湯で思い出した。帰宅後の23時26分に購入。整理番号A154。154人目。出遅れた。キャパをググったら200人。この番号じゃ、人に埋もれてステージもまともに見えない状態で後方彼氏面をするしかなくなるのか。残念。と思ったが、X(旧Twitter)を見ると優衣チャンの熱烈な支持者であられる某氏も購入が遅れ悪い番号になったと知った。氏がそういう状況であれば、私程度が変にいい位置をもらうのは場違いだ。なにせこの公演は優衣チャンの生誕祭である。新参者のライト層である私が出しゃばるべきではない。これくらいの番号がむしろちょうどいい。いや、本当はもうちょっと若い番号がよかったケド。

ジムでトレーニング。正月で二キロ増えた体重は二週間で二キロ戻った。あと三キロ減らす。引っ越しから一年半が経過し満を持して導入したガス・コンロを活用し低脂肪の食事を作っていく。(玄関の照明も購入・設置が完了し、格段に便利になった。)新大久保、淘湘記でランチ定食の高菜毛豆肉沫(高菜と青豆、挽肉炒め)JPY880。健康的でおいしい。おすすめ。大量の青豆。生の唐辛子。慣れないうちは咳き込むくらいからい。今日は15時からの優衣チャン生産祭の前に同じ会場で対バンが開催されている。そっちには行かない。あくまでライト層として、嗜む程度に。節度を持って。距離を取って。

近頃の私はアイドルさんを見ることに対するモチベーションが低下している。その上キャパ200人の会場で整理番号が154番と来た。今日ココに来ることをちょっとめんどくせえなと思っていた。実際にフロアに入ってみると思ったほど埋まっていなかった。中央付近は今からじゃステージがあまり見えないくらい埋まっていたが両端、特に左側はスカスカになっていた。スピーカーのすぐ前、2列目に行くことが出来た。ステージはだいぶ近い。コレで気持ちがちょっと回復した。白髪混じりの紳士に話しかけられる。誕生日記念のメッセージ・カードを集めているらしい。てっきり優衣チャン向けかと思い、話も聞かずにカードを受け取る。Happy 24th Birthdayと書いてある。私もライト層とはいえ優衣チャンがなったのは24歳ではなく23歳なことは把握している。念のためiPhone SE (2nd generation) で検索するがやはり23歳。そしてココに描かれている茶髪女性は優衣チャンではない。れなぱん(大江れなさん)に見える。しかし手元で検索するとれなぱんが24歳になるのは3月10日。まだ先。本当にれなぱんで合っているだろうか? 確信が持てない。結局、誰が正解でも事故にならない汎用的なメッセージを書き込み、紳士に渡した。その紳士に言われるがままに壁際に移動させられ写真を撮られた。いい写真だ、と近くにいたお仲間が言ってた。後から分かったが祝福の対象はれなぱんで正解だった。ごめんネ、れなぱん。なんか適当に書いちゃって。

開演しステージに現れたKissBeeさんの面々。思わず見惚れるメンバーさんたちの可愛さ。目の保養。Hello! Projectとの大きな違いはこうやって間近で公演を見るチャンスが格段に大きいこと。この距離で見るのは全然違う。アイドル・オタクのスイッチが入ってしまう。ただ敢えてぶち上がりはしなかった。スピーカーのすぐ前だったので聴覚の保護を優先し耳栓(THUNDERPLUG)をつけて過ごした。耳栓をつけると周りの声も自分の声も聞きづらくなるため、声を出して騒ぐのは難しくなる。地蔵にならない程度に身体を揺らし、有志の方々にいただいた白のペンライト(優衣チャンのメンバー・カラーは白)を振り、たまに声を出しながら観た。先月のゆいのののときのような異常絶叫はしなかった。1月8日(月・祝)に立川立飛でのリリース・パーティをちょっと冷やかしたのを除けば、KissBeeさん全員をちゃんと観るのは昨年10月16日(月)以来。人数が多けりゃいいってモンでは断じてないけど、メンバーさんが8人いれば8種類の魅力があるわけで、それを一気にギュッと楽しめるのはいいモンだね。私がいたスピーカー付近にいる紳士たちに対しては山崎瑛麻チャンが最も気を配っていた。端っこにいる紳士に向けて、スピーカーをくぐって顔を見せ、何度もレスを与えていた。メンバーさんの衣装が白い特攻服だったんだけど、山崎瑛麻チャンは何度か左側をはだけて中のタンクトップ(黒)と二の腕を見せてくれた。5月末が使用期限の特典券が私の手元に10枚ある。今日何枚か使わないといけない。瑛麻チャンと写メを撮りたいなと思った(結局撮らなかったが)。

かなり楽しいコンサートだった。テーマはDEATHドライブ。優衣チャン以外のメンバーさんはセット・リストをいっさい知らされていなかったらしい。イントロがかかって次の曲がコレだってメンバーさんが初めて把握する。慌ててステージ上の立ち位置を組む。その上トークなしの90分一本勝負。曲と曲の間もほとんどなく、容赦なく畳みかけられるハードな曲。そこに差し込まれる倍速の『どっきんふわっふー』。怒濤の波状攻撃。息を整える暇もないメンバーさんたち。困惑を隠さない。水を飲む時間もない。ついていけず時には音を上げるメンバーさんたちを尻目に、涼しい顔で歌い踊り続ける優衣チャン。優衣ーズ・ブート・キャンプ。メンバーさんたちはへばってグダグダになるんだけどそれがまた楽しくて。KissBeeさんってホントに毎回、趣向を凝らして面白いことをやっているなって感心する。可愛いと楽しいが合体すると中毒性がある。それこそがアイドルのコンサートの醍醐味。終演直後、いや〜楽しかった〜と近くの紳士がお仲間に話していたが、俺もBOY-KENとは同意見である。後半で二曲くらい披露したKissBeeNextさんの一人にonmzの面影を重ねてしまい(笑顔がどことなく似ていた)、しばらくぼーっと眺めてしまった。たぶん野崎来姫さんという方。(もちろん、私が今から氏を支持することはない。それなら本家onmzをまた見ればいいじゃないか。まだ現役なんだから。と言いつつも一回だけ写メくらいは撮って見たいという気持ちも少しだけある。)

特典会では鈴木みゆチャン(14)、篠原ののかチャン(19)、藤井優衣チャン(23)と写メを撮った。私は最近Vladimir Nabokovの“Lolita”を読み始めたのだが、みゆチャンはこの小説で言うところのnymphetsの年齢層にギリギリ収まっている。そんな氏と対面し横に並んで写真を撮り簡単に言葉を交わすのは貴重な経験だった。
Between the age limits of nine and fourteen there occur maidens who to [people] twice of many times older than they, reveal their true nature which is […] nymphic (that is, demoniac); and these chosen creatures I propose to designate as “nymphets” (Vladimir Nabokov, “Lolita”)
私が横に並ぶと(ポーズを)何にする〜?(ハートマークがつく口調)と聞いてきたののかチャンからはいい匂いがした。撮影時にグッと距離を詰めてくれてオジサンはドキッとした。優衣チャン以外のメンバーさんはフロアで、優衣チャン(とKissBeeNextさん)はフロアの外、受付付近で特典会をやっていた。赤いドレスに身を包んだ優衣チャン。ソロ写メ(係員氏がメンバーさん一人だけが写ったソロの撮ってくれる)を終えてから、二人での撮影へ。どんな背景やねんそれ、と優衣チャンが私に言ってくる。何のことかと思ったら私のiPhone SE (Generation 2) の裏に入れてあるNHK撃退シールだった。

2023年12月30日土曜日

上原ひろみ ソロピアノ公演 “BALLADS” (2023-12-28)

休みを取って一日早く仕事を納めた。慣例上は納めたという言葉になるが、実際には中断したに過ぎない。いくつかの懸案事項が残っている。頭が痛い。比喩ではなく文字通りに。26日(火)は問題に気を揉んでいるうちに頭痛がしてきた。夜に銭湯から帰ってきて横になったときが痛みのピークで、バファリンを飲み無理やり眠りの世界に逃げ込んだ。年が明けたらすぐにストレスフルな状況になるのが見えている。年末年始というのは完全に気分の問題であって、2024年になったら2023年の問題がリセットされるわけではない。そして連休といってもそんな大層なものではない。私の勤め先ではデフォルトで6日間、私は1日を追加してやっと7日間。そのうちの貴重な一日は親の家に赴いて家族の集まりに顔を出すという義務で潰れる。仕事に戻る1月4日(木)はその日に必ずやらないといけない業務がある(上記の懸案事項とは無関係である)。今日の休みを取ったことで12月中にやらないといけないことの密度が高くなりストレスは却って強くなった。かといって12月28日(木)も働いていればよかったというわけにはいかない。休みを取る必要があった。まあ18時半開演だから、午後半休とか15時に上がるとかでも間に合ったが。12月28日に仕事上がりでせかせかとコンサートに出かけたくないという意地があった。休みを取った意味を持たせるために14時から美容室の予約も入れた。前日になってもう一つ意味が生まれた。F君と昼メシをご一緒することになった。新大久保のサルシーナ・ハラル・フーズ。バングラデシュ料理店。最近ハマっている。昨日も行った。昨日は骨一緒チキンのドピアザJPY1,500。今日はアヒル肉とじゃが芋のジョルJPY1,800。バングラデシュ式フライドチキンJPY1,200をF君とシェアした。F君はマトンカラブナJPY1,500を召し上がっていた。アヒル肉とじゃが芋のジョルはこれまでこのお店で食べた料理で一番。ゴロッと入った大きなアヒル肉の塊が骨付きかと思いきやすべてが可食部で食べ応えがあった。牛肉のような豚肉のような。フライドチキンは中学生くらいのときに母親が作ってくれていた弁当を思い出した。こういう冷凍食品が入っていた。ただJPY1,200はちょっと高い。JPY700くらいが納得感ある。サルシーナ・ハラル・フーズはスペシャルな店だ。12月28日から1月3日まで日替わりで年末年始スペシャル料理を出している。足を運んでみることをお勧めする。

紀尾井ホール。初めて行く。最寄り駅が四つ。四ツ谷、麹町、赤坂見附、永田町。永田町の7番出口から歩く。駅と会場の間にめぼしい飲食店がゼロ。セブン・イレブンでホット・コーヒー(R)。セブン以外だと会場から道路を挟んだ向かいに巨大ホテルがあってそこのレストラン街はあるにはあったがもちろん高いし一人でサクッと食うタイプの店はなかった。開場前の会場前。若さがない。薄暗い。夕方だからといううだけでなく集まっている人々に光がない。高い年齢層。色褪せつつある。消えつつある。透明になりつつある。ブルーノートに行ったときにも思ったが、ジャズ・シーンを支えている中心層が高齢者なのは紛れもない事実であろう。中でも今日のように騒がしくない土地の、かしこまった会場で、全席着席で、しかもバラード公演となると客層がそっちに偏るのは当然だ。(そもそもが年齢中央値48.6歳という恐ろしい国。恐ろしい状況。何をもって高齢者と括ればいいのかもよく分からない。)バラード曲だけをソロ・ピアノで演奏するという、上原ひろみさん曰くマニアックなコンサート。Sonicwonderlandツアーとは打って変わって、静寂、沈黙が相応しい、ある程度の厳かさが求められる公演だった。完全に別競技。上原ひろみさん曰く、自身がテレヴィジョンで数秒だけ紹介されるときはすごい顔でピアノとファイトしているような映像が使われがち。(前にブルーノート東京でバラード公演を観たときにも同じことを言っていた。)ピアニッシモの小さな音もパンチと同じくらい、もしくはそれ以上に好き。彼女はステージに現れた時点から21日(木)に国際フォーラムで観たのとは別人のようだった。落ち着きのある服、上げていない髪。Sonicwonderの激しいダンス・ミュージックとは完全に異なることをやるんだというのが一目瞭然だった。どれくらい静かだったかというと、私の一つ後ろの列にいた誰かの、鼻くそによって笛となった鼻のピーピー鳴る呼吸音が気になったくらいである。それはまだいいとして、さすがにそれはないだろうというレヴェルで咳き込み続ける紳士がいた。しかもそういう奴に限って前の方のいい席にいやがる。聴いている私の集中でさえ途切れかけたので、演奏に影響が出たとしても文句は言えなかった。百歩譲って咳は生理現象だから仕方がないかもしれない。もっと酷かったのはバターン!って大きな音を立てて何かを床に落とす奴。同一人物かは分からないが何度も。今日の公演を鑑賞するのに適していない人々が一部にいた。キース・ジャレットさんのコンサートじゃなくてよかったな。キース・ジャレットさんだったらプッツンして演奏を中断していたであろう場面が何度かあった。上原ひろみさんは優しいから不機嫌になることも苦言を呈することもなく、むしろトーク中にクシャミをした人に対して「大丈夫ですか?」といつもの温和な調子で尋ねて会場の空気を和ませていた。毒がまったくない。このお方は菩薩か? 私はこの類のことに神経質なほうではないつもりだ。むしろ開演してしばらくは、観客が多少の物音を出すのはしょうがないじゃないか。そりゃ人間を何百人も集めたらこうなるよ。コレがイヤなら無観客でやれっていう話やでと寛容な気持ちでいた。だが、時間が経つにつれお前らもうちょっと我慢できねえのかよ、そんなに体調が悪いなら来るなよという呆れが生まれてきた。最終的には許した。おそらく彼らは身体中の筋肉が弱くなって色んなものが外に出るのを抑えられず垂れ流しになってしまうのだろう。本人としてはどうしようもないのだろう。上記の物音はSonicwonderのツアーであればまったく気にならないどころか聞こえさえしなかっただろう。それくらい違った。ただ、バラードであってもそこにグルーヴはあった。演奏している上原さんと同じように、私も頭を揺らしながら聴いた。即興演奏の興奮もあった。サブ・ジャンルは違えど、それはたしかに上原ひろみさんの音楽であって、ジャズであった。今ココでしか逢えない音を皆さんと探しに行きたいと思います、というコンサートの度に上原さんが発する常套句は今日も健在だった。“Nostalgia”→“Blue Giant”→“Place to Be”がシームレスに繋がるM.6には唸らされた。新曲“Pendulum”の初披露に居合わせることが出来たのは嬉しかった。アンコールを受けてその新曲を演奏し、それで終わりかと思いきや始まる次の曲。何かと思ったら『蛍の光』(セットリスト上は“Auld Lang Syne”)。茶目っ気たっぷりで贅沢極まりなかった。この公演だけでなく、2023年を気持ちよく締めくくってくれる印象深い演奏だった。終わると見せかけておきながら続けたり、テクニカルな連打をしてみたり、こちらの反応を楽しむように緩急をつけたり遊びを入れてきたりするのが、さながら凄腕の手コキだった。

2023年12月29日金曜日

赤と黒 (2023-12-24)

朝から眠い。頭が回らない。タカセで“Hidden Valley Road” (Robert Kolker) を開くもほとんど読み進めることが出来ず。心当たりはある。ザック・ニキことZachariah Bealesanさんのゲーム実況動画を観ていた昨日の寝る前。『誘拐事件』。このゲーム、激しく面白い。チラズ・アート社の最高傑作ではないか。(同社の『閉店事件』も印象的だった。ザック・ニキの実況プレイ動画はコチラ。)とにかくクリエイティヴ。ホラー・ゲームなのだが遊び心たっぷりで。ゲームの中でゲームが始まるのが好き。小説の中で実在する本が出てきて登場人物がそれを読んだり、物語の中に筆者が割り込んできたりするのも大好物。よくないとは分かりつつも途中でやめることが出来なかった。最後までハラハラ・ドキドキしていた。その後にタッピング瞑想をして興奮を鎮め、すぐに寝付くことは出来た。耳栓もつけた。問題なく熟睡できたつもりだった。でも影響はあったのだろう。

めいめいが出演する終演後のトーク・ショウがあるので今日の公演に申し込んだ。そういえばファンクラブ先行で当たったものの振り込みを失念していた。振り込み期限の翌日にファンクラブの担当者からキツめなメールが来た。すぐにりそな銀行のアプリから振り込んで平謝りの返事を入れたが、それに対する返事もややキツかった。でもさ。私は2017年5月からめいめいのファンクラブに入会していて、振り込み忘れなんて6年半で初めてだよ? 当選したらいちいち手で振り込まないといけない以上、ミスを100%なくすことは出来ないよ。こういうことを繰り返しているとか、メールを送っても返事がないとか、そういうときに強く出るのは分かるけど、初手であの書き方はちょっとないんじゃないかと思った。でも理解は出来る。若い人なんだと思う。労働の経験が浅い人ならではの一本槍なスタンス。強い立場にいるからすぐに強く出ればいいと思っている。機微が分かっていない。私も通ってきた道。(でもその割にそっちもちょくちょく細かいミスがあるよね? 同じ担当者か分からないけど。)私も若い頃だったら、こういうとき相手にちょっとキレ返していたかもしれない。そもそも毎回手数料払わせて振り込ませてんじゃねえよ。いい加減クレジット・カードに対応くらいしろやくらいのことをオブラートに包んで。もうそんなことはしない。感情の無駄遣いはしない。すみませんでした。ご対応いただきありがとうございます。今後は気をつけます。という感じで収めた。そういうことはあったけど結果としては無事にチケットを手に入れた。

12時半開演。微妙な時間。昼ご飯を急いで食べて会場入りする必要がある。東京芸術劇場。池袋。あのグローバル・リングがある所。そこの二階。近くの楊2号店で汁なし担々麺。JPY900。カウンター。右にいた紳士が麻婆豆腐、ご飯、水餃子、汁なし担々麺、焼き餃子をお一人で召し上がっていた。久々に観るミュージカル。10月にめいめいの一人芝居コンサートを観ているけど、それを除くと6月25日(日)のダ・ポンテ以来だ。入場した瞬間から、ああなんか久しぶりだな、この感じと思った。それは私にとって居心地の悪さを伴うものだった。変に厳粛で物々しい。陰気で抑圧的。撮影禁止と書かれたボードを掲げる、こういう会場特有の、マスクで顔を覆った女係員たち。アクション・ゲームで特定のステージに無数に配置されるモブ・キャラのようだ。どこからどうやってリクルートされるのだろうか? 公演中は私語をやめろ、撮影するな、などと念を押す場内放送。別に言っている内容が間違っていると言いたいわけではない。私語や撮影を自由化しろと言いたいわけではない。この世界ではそれが正しい。ミュージカルって観客が積極的に参加して作り上げるではないものね。観客の反応を見ながら即興で内容を変えるものでもないし。観客が変に声をあげたらステージ上の世界をぶち壊してしまう。だから向こうにとって大切なのはいかに我々を最後までおとなしくさせるか。いかに我々を押さえつけるか。いかにつつがなく最後まで無事故で公演を終わらせるか。それがココでは正義。そういうもの。繰り返す。それを否定するつもりは一切ない。ただ、久しぶりに来て気が付いた。私がライヴ・エンターテインメントに求めているのはコレではない。私がライヴ・エンターテインメントを必要としている理由。それは労働生活で自由に表すことが出来ない喜怒哀楽を解放する場所が必要だから。なんでわざわざ自由なはずの時間に、仕事で得たお金を使ってまたコントロールされないといけないんだ。私は出来上がった作品を映画を観るようにただおとなしく受け取るためにライヴ・エンターテインメントに足を運んでいるのではない。私はそのとき限りの奇跡を味わいたい。その一部になりたい。私が欲しているのは熱狂なんだ。めいめいがミュージカル女優を続ける限り、これからも氏が出演するミュージカルを観に行くことはやめるつもりはない。だが、氏を度外視してこの世界に深入りすることはないだろう。

12月21日(木)の上原ひろみさんのコンサートでは眠気がいい方向に作用したが、今日はそういうわけにはいかなかった。ちょっと眠すぎた。20分の休憩時間には歩いたりストレッチをしたりしたが、それでも眠気が抜けなかった。話の内容にもそこまで興味を持てなかった。音楽も特にはまらなかった。予習としてSpotifyで本家のサウンド・トラックを一度だけ聴いた。二度目は聴いていない。舞台は19世紀のフランス。分からない。20世紀後半以降のアメリカ合衆国のことなら多少かじっているので、この頃はこういう時代だったよなという自分の知識と照らし合わせながら観ることが出来るが、フランスに興味を持ったことがない。私の隣で観劇していた淑女が、どうやら感激して泣いていたようだ。単に鼻をすすっていただけの可能性もある。根が紳士に出来ている私はジロジロ見なかったので確認できていない。泣いていたと仮定しよう。私の感覚ではアレで泣くのはちょっと分からない。でもそれは私がまだそのレヴェルに達していないからだ。おそらく彼女にはこのミュージカルに感情的に入り込めるだけの素養が備わっているのだ。たとえば原作の小説を読んでいるのかもしれない。何も知らずにただめいめい目当てで観に来た私とは魂のステージが違うのだ。一方で彼女は、私が6月10日(日)の明治安田生命J1リーグ第17節、横浜F・マリノス対柏レイソルで後半52分に宮市亮さんが劇的な逆転ゴールを決めた後に狂喜乱舞し涙を流したことを理解できないだろう。なぜあのとき私が泣いたのか。それはあのゴールを点ではなく線で見ていたからである。再三の負傷離脱に苦しめられ、引退する意思を撤回し復帰したばかりの宮市さん。小暮トレーナーに支えられながら続けてきた苦しいリハビリ。後半45分の時点で2-3で負けている苦しい試合展開。リーグの優勝争いにおけるこの勝利の重要性。そういったさまざまな点が線となって私の中で繋がったからこそ、私は泣いたのである。『赤と黒』で泣ける人にも、おそらくその人なりのストーリーがあるのだ。

めいめいが登場したのは休憩明けの第二幕(後半)からだった。氏だけを目当てにJPY13,500のチケットを買っている身としては苦しかったが、かなりいい役ではあった。めいめい独特の華があった。第二幕が始まった途端に空気が変わる感じはあった。ちょっと前の横浜F・マリノスで後半から仲川輝人さん、マルコス・ジュニオールさん、オナイウ阿道さん、エリキさんらが出てくるような凄みとワクワク感があった。主演の紳士(三浦宏規さん)はどこか扇原貴宏さん感があるなと思いながら観ていたら終演後のトーク・ショウでは扇原さん同様に関西弁だった。関西のイケメンの系統。めいめいは家のテレビが映らないらしい。屋根裏にはネズミがいる。最近はネズミの消毒業者とテレビのアンテナ業者がよく家に来るという話でステージ上と客席から受けを取っていた。

2023年12月27日水曜日

上原ひろみ Hiromi’s Sonicwonder JAPAN TOUR 2023 “Sonicwonderland” (2023-12-21)

毎朝モーター・サイクルのエンジンを爆音で入念にふかしてから出かける近隣住民。家のすぐ前にあるゴミ捨て場にゴミを捨てる音。特に火曜日、ビン・缶の日。時間を問わず常に行き交う人々と自動車。ときおり発生する異常者のわめき声。通報を受けて車と自転車で駆けつけるポーの物音と話し声。深夜早朝にその辺でえずく紳士。この町に越してきて一年半。知らず知らず妨害されてきた睡眠。だましだましやり過ごすのはやめるべきだと考えるようになった。耳栓をつけて寝るようにしたら上記の音がどれも気にならなくなった。最初に使った耳栓は何時間もつけると痛みやかゆみが出てきた。MOLDEXのメテオというモデルに変えてみたところ、その問題がなくなった。12時間くらいつけても違和感はない。ひょうたんのようにくぼんだ形なので、耳への負担が少ない。MOLDEXの他のモデルに比べると遮音性は低いものの、睡眠中に上述の騒音から逃れるには十分である。200ペアをアマゾンの定期便に追加した。難点はアラームもほとんど聞こえなくなることであるが、私がアラームをかけることは稀なため問題はない。私にとって耳栓をするのと音楽を聴くのはある意味で同じ行為である。世の中の聞きたくない音を遮断しているのだ。

仕事の状況が落ち着いている。16時半に在宅業務を切り上げて有楽町に向かう。公演の前に軽く一杯ひっかけた方がいいのではないかと思っていた。理由は前回の記事を読んでもらえれば察してもらえるはずだ。客席のヴァイブスがあのときの再現になるならアルコールでも入れておかないと飲まれてしまうだろう。しかし考えた結果、お酒は我慢した。お酒は昨日飲んだし、明日も飲むからだ。昨日は会社の忘年会。生ビールをグラス2杯、赤ワインを3杯くらい。明日は前の会社で仲がよかった同期二人と忘年会。(池袋ナンバー・ワンの中国料理店、太陽城。)いわゆる町中華と呼ばれる日式の中華料理店に入った。多くを期待できないのは承知の上。有楽町駅のすぐ近く。JPY850だかJPY880だかで定食を出している。周囲を散策してもめぼしい店もない。中途半端にJPY2,000だのJPY3,000だの払うよりはココでおとなしく定食を頼んだほうがいいだろう。卵とキクラゲ炒め。見事なまでに期待を寸分も上回らず、下回りもしない。コレはコレでひとつの芸当と言える。

思い返す、2週間前。同じ会場。国際フォーラム Aホール。来場者の大多数を占める、羊のような客たち。それが今日は一転して大熱狂するとは考えにくい。その羊たちの群れから脱することが出来ない自分のふがいなさ。また同じ悔しさを繰り返すことになるのだろうか。そもそも水曜、金曜と忘年会があって、日曜日にはめいめいのミュージカルを観に行く。そして上原ひろみさんに関してはまた28日にコンサートを観に行く。このツアーとは別の公演だが。今日の自分がそこまでコンサートを欲しているわけではない。チケットを誰かが買い取ってくれるなら売ってもいいくらいのモチベーション。若干ダルいなと思いながら会場に向かい、席に着いた。今日は12列目の右側。19列目だった前回よりはステージに近づいた。距離としては渋谷のときと同じくらいだろうか。今回も左が男女カップルだ。開演し、ステージに現れる上原ひろみさん、アドリアン・フェローさん(ベース)、ジーン・コイさん(ドラムス)、アダム・オファリル(トランペット)さん。感情のこもらない拍手で迎える私。始まる一曲目。はいはい“Wanted”ね。とそこまでは気分の高揚がなく、醒めていた。

不思議なもので、そこから大きく巻き返した。客席のヴァイブスは2週間前と大きくは変わらなかった(でも声を出している人は前よりも多かったかな?)。良くも悪くもインテンシティの高くない人たちも多く観に来ている。良くも悪くも、と書いたのは良い点もあると気づいたからだ。私と同じ列に、小さな娘さんとその母親らしき淑女の二人組がいた。たしかにこういう層が来やすい場として、着席会場での公演には意味がある。彼女らに渋谷のスタンディングは難しい。客席にいる少年・少女の中に将来の上原ひろみさんがいるかもしれない。視界に入る観衆を見て、おかしいなと思うことはあった。だってこのバンドの音楽は曲によっては本当に激しいダンス・ミュージック。着席とはいえほぼ全員が刑務所の慰問コンサートよろしく微動だにせず聴いているのは不可解。とはいえさほど気にならなかった。周りがどうこうではなく自分が如何に楽しむかに意識を集中できた。要因として第一に、12月7日(木)に同じツアーを同じ会場で観て、雰囲気を掴めていたこと。分かっていたので一から失望することはない。それを踏まえた上で自分がどう振る舞うかに頭を切り替えられた。あの一回目があったからこそ今日の二回目をココまで楽しむことが出来た。12月7日(木)の一回だけなら消化不良で終わっていた。第二に、昨日の飲酒による睡眠の浅さ。耳栓の効果もあってよく眠れたつもりだった。中途覚醒もしなかった。でも睡眠の質は低かったのだろう。この時間に眠気が来ている。ただ、今日に関してはそれがいい方向に作用した。眠いけど居眠りしてしまうほどではない。ほどよいけだるさ。雑念なしに、無駄に考えることなく音の世界に浸ることが出来た。素晴らしいツアー千秋楽を全力で楽しむことが出来た。

同じバンド、同じツアー、同じ会場、同じ開演時間、同じ曲目。なのに2週間前に聴いたのとぜんぜん違う。分かっていたつもりだが、頭のどこかにまた同じコンサートを観に行っているという考えがあった。それは間違っていた。すべてのコンサートが本当に別物。そのときだけの奇跡。二度と再現されることはない。いつ行っても同じ60-70点を提供する町中華とは違って、どの公演でもそのとき限りの100点を叩き出す。それが上原ひろみさんのコンサート。彼女のプレイはいつになく激しかった。前回も素晴らしかったけど、ひときわ情熱的で、幾度となく感情を揺さぶられた。アドリアン・フェローさんによる圧巻のベース・ソロも印象的だった。私は前回より何段階か感情を解放することが出来た。フー!とYeah!を何度もやった。歓声を浴びせる観客には大別してフー!オジサンとYeah!オジサンがいる。フー!オジサンは基本的にフー!しか言わない。Yeah!オジサンは基本的にYeah!しか言わない。私はフー!オジサンとYeah!オジサンを兼ねるポリバレントな選手としてコンサートのヴァイブスを高めた。その貢献度たるや2022年の横浜F・マリノスでセンター・バックとボランチを兼任した岩田智輝さん(現・セルティックFC)の如くであった。もっとも別に歓声がフー!かYeah!である必要はなく、本当はたとえばすげー!とか見事だ!とか何でもその場で思ったことをそれぞれが口に出して拍手すればいいんだろうね。それはジャップが苦手なやつ。