2015年9月22日火曜日

ヨウジの服を売り払った。

かつては、週末にヨウジ・ヤマモト(以下ヨウジ)の服を身にまとうのが私にとっての至福だった。ヨウジの服を買うために働いていると言っても過言ではなかった。そうではないと説明が付かない出費だった。投資ではなく浪費であり、自分を幸せにしないことは分かっていた。ある時期からは使う金額をほどほどにしようと努力していたが、好きだという気持ちとの折り合いが付けられず、うまく行かなかった。毎シーズンずるずると店に通っていた。

2013年5月に無職になったのを境にヨウジをまったく着なくなった。収入がなくなったので新しく買い足せなくなっただけでなく、既に持っていたヨウジの服を着る意欲も失った。当時メールでやり取りをしていたヨウジのTさんには、事情があって少しの間お店に行けない、でもヨウジが好きであることに変わりはないという連絡をしていた。偽らざる本心だった。その少しの間は今でも続いていて、あれから一度もお店に足を運んでいない。実に2年半だ。2014年7月に再び職を得て、1年以上が経った。生活に余裕が出てきて、また服を見るのが楽しくなってきた。でもヨウジは見ていない。

私の部屋の2割以上をヨウジの服が占めていた。今ではほぼゼロになった。捨てたし、売ったからだ。8月のある日、ふと思い立った私は「ブランド 買い取り」で検索して上位に来たZOZOTOWNの買い取りサービスに申し込んだ。驚くほど簡単だった。段ボールの小か大、あとは袋の3種類から選ぶ。届いたら服を詰め、集荷を申し込む。ヤマトに渡す。こちらは伝票に記入する必要すらない。集荷の依頼もZOZOTOWNのページから数クリックで出来る。3日くらいすると査定額の連絡がメールで来る。取引を確定させ、銀行口座を登録し、身分証明書の画像をuploadすればお金が振り込まれる。査定額については、Yahoo!オークションに出して買い手が付けばもっといい金額で売れただろうが、問い合わせへの対応や発送を全部自分でやらなければならない。一点一点の服に対してそんなことをやるのは大変だし、出品したところでいつ売れるかは分からない。売れないかもしれない。そう考えると、まあ納得できる査定額であった。信頼できると踏んで2回目、3回目とZOZOTOWNに服や靴を売った。

1回目:リユースバッグ(57x37x27cm)
6点 28,510円

2回目:段ボール大(57x37x27cm)x2箱
16点 69,510円

3回目:段ボール大(57x37x27cm)x2箱
31点:60,620円

計53点 158,640円

売ったのはヨウジだけではないが、これでヨウジの服や靴は殆どすべて家からなくなった。スーツ2着はこれからも使えるので残した。捨てていた服も何着かあったのだが、それらもZOZOTOWNに売っていればあと数万円になっていたと思う。惜しかった。

レッグウォーマーがアームウォーマーとして査定されていて、ZOZOTOWNの古着市場でアームウォーマーとして販売されるのを想像するとちょっと面白かった。2007年秋冬のDr. Martensとヨウジのコラボ作ブーツ2足に10,000円ずつの値段が付いたのは大きかった。だって8年前のブーツで、買った値段はたしか35,000円だよ? 薄手のカーディガンでも厚手の凄く値の張ったセーターでも一括りにセーターとして同じ値段が付いていたのは少し不満。けっこう着古したコム・デ・ギャルソンのシャツに3,000円くらいの値段が付いていた。ヨウジとかコム・デ・ギャルソンは古着市場でも強い。

溺愛して止まなかった、自分の身体の一部とさえ思っていたヨウジの服は一部を除き私のものではなくなった。もう二度と見ることもなくなった。売ったことを後悔している服や靴は一点もない。むしろすがすがしい気持ちでいっぱいだ。スッキリした。私はもうヨウジを必要としていなかったのだ。ヨウジは私の心の中で何かの不足を満たす存在ではなくなっていたのだ。こう書くと何かの依存症や中毒から脱却したかのようだが、実際それに近いかもしれない。今後、前のようにヨウジにはまる気がしない。今の私は再び服を、ファッションを楽しみ始めているが、ヨウジを愛好していた頃とは方向性が前とは異なる。それはまた別の話。