2016年5月6日金曜日

MISSION 220 (2016-05-03)

グッズの販売が始まる14時までまだ20分くらいあったが、既に列が出来ていたのでそこに並んだ。風でページがめくれるのを手で押さえながら『ヒトラー演説 - 熱狂の真実』を読んでいたが、近くに並んだ女性二人組の会話が耳に入ってきて、興味をそちらに持って行かれた。どうも芸能活動をしている方々らしく、もっと言うといわゆるアイドルと呼ばれる職種に従事されているようだ。ここではっきりとアイドルと言わずに「いわゆる」と言ったのは、私にとってアイドルというのは軽い言葉ではないからだ。私の中でアイドルとは、最狭義ではハロプロのメンバーのことである。ハロプロのメンバー以外にアイドルという言葉を簡単に使いたくない。ただ若くて可愛くて人前で歌う仕事をしている女というだけでハロプロと同じ分類の中に入れたくないし、やっている側も簡単に自称して欲しくないのである。

私には他人の会話を盗み聞きする趣味はないのだが、本当は前髪を切りたくなかったのに指示で切らされた、○○さん(マネージャーかプロデューサーのようだ)は誰でも前髪をパッツンにさせる、オタクはパッツンが好きらしいとか、高校を出てからこの世界に入ってよかった、なぜならみんなチヤホヤしてくれるし世の中を知らないうちにこの世界に入ると勘違いしてまうからとか、そんな面白すぎる話をされると嫌でも聞き入ってしまう。本には書いていないストリートの真実だ。非は聞いてしまった私ではなく、公共の場で周りに聞こえる声でそういう話をした向こうにある。顔もよく見ていないし、お二人の名前も所属グループも分からない(仮に分かったとしてここで特定できるような形で書くつもりはない)が、誰に聞かれるか分からない場所でそういう話をしてしまう時点で失礼ながら一流ではないんだろうなと思った。おそらくハロプロのメンバーはこんな不用意なことはしないであろう。

日替わりA5写真の宮崎由加さんと宮本佳林さん(各500円)とコレクション生写真(一枚500円)を5枚買った。コレクション生写真を開けると宮本さんが2枚、宮崎さんが1枚、金澤さんが2枚だった。宮崎さんが出てきた瞬間、可愛すぎてのけぞりそうになった。自分の中でのJuice=Juiceのトップ3しか出てこなかったので当たりと言ってよかったが、問題は金澤さんの2枚が同じ写真だった点だ。これを何かと交換したい。あわよくば宮崎さんのと。中野サンプラザはいつも駐輪場や飲み物の自販機があるあたりにコレクション生写真等の交換をしてくれる紳士たちがたむろしている(あと普段は交換と着替え用のテントがあるが、今日は強風のためテントはなし)。交換を請け負っている紳士たちは、物欲しそうな目をして付近をウロウロしていると「何かお探しですか?」と麻薬の売人のように向こうから声をかけてくれるから助かる。白髪の売人に相談した結果、私が持っている2種の宮本さんの写真を、私が持っていない2種の宮崎さんの写真と交換するということでどうかというご提案をいただき、ありがたく受諾した(私がダブった金澤さんの写真は彼も在庫がだぶついているということで交換してくれなかった)。これで宮崎さんの全3種を揃えることに成功した。代償として2枚の宮本さんを失ったが、5枚分の投資でこれだけの成果が得られれば十分でしょう。喜びを噛みしめながら近くのベローチェでブレンドコーヒーを飲んでブログを書いた。付近を散策して気になった中華料理店に入って、黒ホッピーを焼酎で割ったのか、焼酎を黒ホッピーで割ったのか分からないが、ともかく円卓で黒ホッピーと焼酎を混ぜて飲んだ。ラー油をかけた蒸し鶏と、クラゲの冷菜と、ニンニクの入っていないもちもちした餃子を食った。いい気分に仕上がった。

開演が18時半からなので、18時ちょい前に会場に戻ったが、会場の前にはまだ長い入場列が出来ていた。3日前の℃-uteに続いてまた開場が遅れているのと思ったが、案外そこからの進みは早く、予定通りの時間にコンサートは始まった。ペットボトル入りのお茶を飲んだせいなのか、開演の直前に尿を放出したにも関わらず序盤から尿意との戦いだった。ケミカルライトの電池残量が少なくなって、宮崎さんの色(ピンク)が出なくなった。これは予想していたので電池はポケットに入れていた。なるべく視線はステイジに送りつつ手元で単4電池を三つ入れ替えた。少し手こずった。これがOutlastであれば電池交換にこれだけ時間をかけていたら敵に襲われて死んでいただろう。

千葉(4月16日)と大阪(4月23日)の公演を観に行った先人たちが演出を褒めているのをTwitterでちらっと目にしていたが、実際に新鮮な驚きを与えてくれる演出だった。はじめにステイジ全体を覆う半透明の幕。各メンバーに順番にスポットライトが当たっていき、その方が踊りを披露する中、名前と写真が幕に大きく表示される。冒頭のメンバー紹介の映像はあった方が気持ちが盛り上がる。ハロプロのコンサートの中で最も格好いい部分の一つだ。その後にコンサート・ツアーMISSION 220のロゴが幕いっぱいに表示されるのが、特別なコンサートが始まることを予感させた。上から数多くの電球が下りてきて色が変わったり一つの形を作ったりするという演出もあった。この電球の演出自体は安っぽかったが最後に「J=J」の形になるのは驚いたし周りの観客も感心していた。植村さん+高木さん、金澤さん+宮崎さん、宮本さんという順番でダンスをしていく箇所では宮本さんが下から上に飛ばされる形でステイジに登場し、おーという歓声が上がった。

「ZEEBRAとのあの曲のときも『ヒデなら言いかねない』って担がれたもんな」
2004年に繰り広げられたビーフでDev LargeがK DUB SHINEに贈ったディス曲に上記の歌詞がある。ヒデとはZEEBRAのことだ。私が正しく理解できているか自信がないが(もし正解を知っている人がいたら教えてください)、昔ZEEBRAがDev Largeをディスったのではないかという疑念が生まれたときにK DUB SHINEがDev Largeに「ヒデなら言いかねない(つまりZEEBRAならDev Largeをディスりかねない)」と言ってZEEBRAとの対立を煽った(ところがZEEBRAがDev Largeをディスったというのは誤解だった)という話のようだ。

「Juice=Juiceならやりかねない」、私はそう思っていた。彼女たちがコンサートの途中で通路に降臨したのは完全に想定の範囲内だった。そこに驚きはなかった。しかし、予想できなかったのはただの降臨ではなかった点だ。13列目のすぐ前に台を置いてそこに各メンバーが乗って歌ったのだ。私は14列目に立っていた。宮本佳林がすぐ近くにひょこっと姿を現したときには本当にびっくりして「うわ!」という声が出てしまった。どれくらい近いかというともしあなたが13列にいて目の前にメンバーが来たら、普通に手を伸ばすだけで触れることが出来る。人生を終わらせる準備が出来ていれば抱きつくことも可能だ。実際に抱きついたら退場させられるとか逮捕されるとかの前に周囲の観客にリンチされる可能性があるが、そのリスクを取る人は現れなかった。ファンとJuice=Juice側の信頼関係が素晴らしい。後のしゃべりでもJuice=Juiceは口々に、ファンが簡単に触れる状況にありながらそうしてこないことに触れ、Juice=Juice familyはマナーがいいと褒めていた。「だって頑張って近づけばキスできるわけじゃないですか。いや、近づかないでもらいたいですけど」と金澤朋子。高木紗友希が、予想と違うことが起きると人は感動する、そういう仕掛けを用意しているというようなことをブログに書いていた。私はまんまと術中にはめられた。14列は特等席だった。13列だったら完璧だった。

私は2日前と3日前に℃-uteのコンサートを観ていたばかりだった。℃-uteを観たすぐ後に観ると、Juice=Juiceの粗が目立った。歌唱にしてもダンスにしても全般的な安定感にしても、℃-uteがはるかに上だった。今日のJuice=Juiceは歌詞を飛ばす場面が何度か見られた。“Girls be Ambitious”で金澤さんは「ってなわけで色気担当にyes!立候補!」という見せ場を飛ばしていた。私が勝手にそう思っただけかもしれないが、金澤さんは少し体調が悪そうに見えた。あとメンバーではなく裏方に関することだが、やたらと重低音が強いときがあったり、メンバーの歌声が小さいときがあったりと、疑問に思うときがあった。ショーとしての完成度は明らかに℃-uteの方が上だった。でも、今日のJuice=Juiceのコンサートの方が単純に楽しかった。

歌詞を飛ばした金澤さんだったが、元祖爆笑王というラッパー並に自信に満ちた芸名の構成作家と二人で毎週ラジオ番組をホストしているだけあってしゃべりでは笑いを取っていた。ここにいる皆さんは何をきっかけにJuice=Juiceを好きになってくれたのだろうと金澤さんが話題を振ると高木さんが、コレクション生写真で3回当たったから自身のファンになった人がいると言った。その人が全身を(高木さんのメンバー色である)黄色で固めたファンだということに触れた金澤さんは「暑苦しいですよ」と毒を吐き笑いを取って「いやいや、暑苦しいくらいがいいと思ってるから」とわざとらしく弁解していた。キス発言といい、観客の心をつかむ一言を心得ているようだった。

Juice=Juiceからは、中野サンプラザでコンサートが出来ていることの幸福感が存分に伝わってきた。宮本さんはいつもニヤニヤしていた。今ここでコンサートが出来ていることが本当に嬉しくて楽しくて、その気持ちがあふれ出てきて押さえられないという表情だった。皆さんの活力になるコンサートを提供したいというようなことをおっしゃっていたが、宮本さんを見ているだけで活力になりまくる。他のメンバーも、Juice=Juiceだけをみるために多くの人たちが集まってくれたということに感激を隠さなかった。難点を挙げるとすれば、本コンサートの中におへそを出す衣装が一つもない点である。つんくが『おへその国からこんにちは』という曲を作ったように、ハロプロはおへその国であるという理念を忘れて欲しくない。コンサート衣装の一つはへそ出しにして欲しい。本編の最後に上下が分かれた衣装があるにはあったが、へそは出ていなかった。宮崎さんのお腹が筋肉質だった。一日何回くらい腹筋をしているのか気になる。それはともかく、驚きを与えてくれる演出に、生き生きと楽しむメンバーたちの姿、そして彼女たちの感情が客席に伝播した幸せな空間であった。終演後、℃-uteのコンサートで終演後に観客が叫ぶ「℃-ute最高!」とまったく同じイントネイションで「Juice最高!」がわき起こった。尿意はいつの間にか忘れていた。