2016年5月7日土曜日

MISSION 220 (2016-05-04)

昨日は1公演のみ(2公演のうち片方に参加したのではなく、開催されたのが1公演)だったが、今日はみっちり2公演を観させてもらう。5月2日にマッサージを受けジムで汗を流し休養を取っていたので体調がすこぶるよく、身体の疲れは感じていない。昨日のコンサートが純粋に楽しいと思えたので、気の重さがまったくない。これが終わればこの連休中の連戦は終了だ。コンサートの後には「GW(ジーダブリュー)に自慰ばかりしてないで一杯やらないか?」という私からの韻を踏んだ誘いから決まった、友人と肉を食う約束が控えている。心身ともに充実していて、楽しみが重なってバイブスが高まっている。

私だけでなく会場全体のバイブスも高まっていた。開演前に昨日はなかった「ジュース!ジュース!」というシュプレヒコールが起きた。全員が一致団結してやっているというよりはあちらこちらでちらほらとやっている感じだった。Juice=Juiceのコンサートに来たときの私のルーティンである日替わりA5写真の宮崎さんと宮本さんの購入を済ませて(コレクション生写真も買おうとしたが、売り切れていた)23列の一番右の位置(いちで韻を踏んでいる)に着いた。後方の端っこでステイジからの距離があったので、14時の公演では双眼鏡を多めに使ってじっくり観ることに決めていた。昨日の鑑賞でコンサートの流れや演出は何となく頭に入っていたので、全体に目を配るべき場面と個人を見るべき場面、じっくり見ていい場面とケミカルライトを掲げたり身体を動かしたりするべき場面の見極めは出来ていた。

昨日も気になっていたのだが、高木紗友希の声がいつもの調子ではないように聞こえた。裏方による音の調整がうまく行っていないのか、本人が喉に不調を抱えているのか、あえて歌い方を変えたのか、それとも私が会場の隅にいるから音の聞こえ方に偏りがあるのか、判断が付かなかった。高木さんはグループで上位の歌唱力を持っているが、昨日と今日に関しては煮え切らない感じがした。植村さんの歌声もこもっている感じがしてあまりはっきりと聞こえなかった。宮本さん、金澤さん、宮崎さんの歌声は比較的よく通って聞こえた。

Juice=Juiceメンバーはことあるごとに1年ぶりに中野サンプラザでコンサートが出来ることの喜びを強調していた。宮崎さん、高木さん、金澤さんの三人がステイジで話すセグメントでは、去年の中野サンプラザ公演のDVDを観たかと宮崎さんが二人に問いかけた。ご自身が今よりもやせていて、細くて黒くて「シャー芯みたいだった」と言っていた。たしかに由加はやせていたねと話を受けた高木さんは、他のメンバーは今よりも少しずつ太っていたと言った。みんな今が一番いい体型なのかな、という話になったところ金澤さんは「私はもうちょっとやせなきゃ」と言った。そして「太った?とよく握手会で聞かれるがそう言ってくるファンの方が太っている」的なディスをぶっ込み会場を笑いで包んだ。着替えを終えた植村あかりが「今キー(高木)が言ったの?」と笑いながら話に合流してきたが、「私そんなこと言わないから」と高木さんは憮然としていた。あまりに素直な金澤さんの言葉にJuice=Juiceも観客も笑いが止まらなかったが、宮本さんが「皆さん、このコンサートでやせましょう!」と観客に投げかけてうまく締めていた。

降臨タイムでは14列の中央付近で宮本佳林を間近で目撃!ドキュンできた昨日と違って金澤さんと宮本さんのご尊顔が辛うじて双眼鏡で拝見できる程度だった。左の方にいた宮崎さんは昨日でさえあまり見えなかったので、もっと遠い位置にいる今日はほとんど認識できなかった。いくらメンバーが台に乗ることで通常の降臨よりも見えやすくなっているとは言え、運のいい限られた人だけが味わえる悦楽であって、大多数は指をくわえて見る他ない。2階席から観ていた人のTwitterを見たら降臨時のメンバーは姿が見えなかったと書いていた。

高木さんが、通路に降臨したとき(降臨というファン目線の言葉をメンバー自らが使っているのが興味深い)に観客の誰かからいい匂いがしたと言った。「えー?」と驚く金澤さんに高木さんが「えー?って…」と「ファンがいい匂いがすると言ってそんなに驚くのは、つまりファンが臭いと思っているのか?」という問いかけを言外に含ませるような突っ込みを入れて「いやいや、そういう意味じゃなくて…」と金澤さんが慌てていたのには笑った。ファンが自分より太っているという金澤さんの発言への「私そんなこと言わないから」にも見られるように、高木さんはおちゃらけているように見えて実は発する言葉は非常にまともで真面目である。他のメンバーの奔放な言動と高木さんの良識的な反応が組み合わさったときに何とも言えない面白さが生まれる。金澤さんが「フレグランス付けてる人?」と投げかけるとそこら中の紳士がはーいと手を挙げたので「本当?」と笑っていた。高木さんは「Juice=Juice familyの皆さんはいい匂いがするんですね」と不自然なまでに媚び媚びな持ち上げ方をしてから「DVD収録だから言ってみた」と落とし、嘘だったのか!と他のメンバーから突っ込まれていた。しかしいい匂いがしたのは本当だったと言っていた。

このコンサートでは“GIRLS BE AMBITIOUS”の冒頭にJuice=Juiceと観客とでかけ声のやり取りがある。昨日は金澤さんが「ヤーヤー!(Yeah! Yeah!と言っていたのかもしれないがヤーヤーに聞こえた)」「ジュース!」を男の子(その後におじさんでもいいよと補足)、女の子に分けて叫ばせていたが、こちらが気の毒になるほどに女の子のときの反応が小さかった。Juice=Juiceは当初、女性受けのするお洒落なグループにするというのが事務所側の目論見だった(そのコンセプトに合わせるため宮本佳林は「がんばりん!」というドープな決め文句を禁止されていた)。しかし昨日の「女の子」からの反応を見るかぎり、一時期は女性限定イベントをやっていたこともある集団とは思えなかった。今日の14時公演では“GIRLS BE AMBITIOUS”の会場とのcall and responseを宮崎由加が担当した。昨日の結果を踏まえて作戦を練り直したのだろう、今度は男女の区別をなくし、30歳以下と30歳以上に分けて声を出させていた。すると30歳以上からのアンサーが大部分を占めた。私を含む30歳以上の観客(ほとんどは紳士)がかけ声を返すと「おー、こっちの方がずっと元気ですねー」と宮崎さん。我々が小僧どもを蹴散らす勢いで大きな声を返している最中、植村さんは笑い、高木さんは大げさに驚くような反応を見せていた。「30歳か40歳かで迷ったんです。30歳がちょうど境目かと思ったんですが、私の考えが甘かったですね」と宮崎さん。

コンサートの開演前に流れている曲がドープで、自然と身体が乗ってしまうゴキゲンなチューンだった。誰の何という曲なのか気になっていた。私の卓越した英語の技能を生かして聞き取った歌詞を検索して調べたところLunchmoney Lewisの“Bills”という曲であることが分かった。

18時からの公演は21列の中央寄りの通路席だった。後方ではあったものの2回連続で通路席だったのは嬉しかった。始まる前の観客席では、前の公演で自然発生したジュース!ジュース!のかけ声が前よりも大きくなっていた。コンサート中のしゃべりのセグメントで高木さんがジュース!コールに触れた。始まる前にみんなで裏で聞いて「ありがとう」と本当に言っている、あれを聞くとテンションが違うと(テンションをこの意味で使うのは和製英語)嬉しそうに言っていた。

金澤さんと宮崎さんが二人でしゃべるセグメントがあった。金澤さんが「気になっていること」として宮崎さんがコンサート中に付けている髪飾りについて話を振った。コンサートを鑑賞した金澤さんのお母様が可愛いと褒めていたという。宮崎さんは、髪の長さがうえむーと一緒だから遠くから見ても分かるように髪飾りを付けていると説明した。(これを聞いて私は以前サッカー選手の誰かが金髪にした理由とし遠くから見ても目立つように、と同じ理由を挙げていたのを思い出した。)目が悪い人でも分かるようにしている、私も目が悪いから目が悪い人の気持ちが分かると言って観客の喝采を浴びていた。宮崎さんの目が悪いというのは初めて知った。今「宮崎由加 視力」で検索すると、2013年10月26日の宮崎さんのブログが出てきた。その記事には中学生の頃からコンタクトをしていると書いてあった。

私の二列前で、運動をしていなさそうな身体に金澤朋子のTシャツをまとった中年男性が、頭頂部の露出した亀頭のような頭でモグラ叩きのモグラのようにコンサート中ずっとピョンピョン跳ねていた。でも私の心は不思議と穏やかだった。色気付いた二十歳そこそこで髪を染めた青年が過剰なジャンピング行為に励んでいるとなるべく早期に無惨な死に方をしてくれと祈るが、だらしない身体で頭の禿げ上がった中年の紳士が類似の行為をしていると、この人はきっと人生がつらいんだろう、こうやってコンサートで飛んでいるのはせめてもの発散なんだと思い、許してしまう。

アンコールの「ジュース!もう一杯!」にはいつものように「もう一杯」側で参加した。アンコールを受けていつもように曲が始まるのかと思っていたら、Juice=Juiceからのお知らせだかご報告だかと題した動画が流れ観客は意表を突かれた。動画の中では10月29日の沖縄公演をもってMISSION 220で目指していた220公演を達成できる運びとなった旨を宮崎さんが発表した。その後に各メンバーのコメントがあって、動画が終わるかと思いきやそこにメンバーにも知らされていなかった発表が追加された。11月9日(月)に日本武道館での公演が決まった。動画の中でJuice=Juiceは涙を流して喜んでいた。私も目が潤んだ。会場は大歓声に包まれた。この動画は当日21時にYouTubeの『ハロステ』に公開された。多くの観客が声を合わせて手を上下させながらバンザーイ!バンザーイ!と叫んだ。私は躊躇した。

2006年9月に始まったアメリカのTV番組“HEROES”で名を馳せた俳優Masi Okaは、用意された台本にあったバンザイ(正確にはbonsai)という台詞を見て、バンザイでは戦争を想起させるのでヤッター!に変えたいと申し出た。本人がインタビューでそう言っているのを聞いたことがある。番組のヒットと共にヤッター!は多くの人が知る有名な決め台詞になった。バンザイという言葉を避けた彼の考えは神経質に過ぎるのではないかと当時の私は思い、素直に受け入れられなかった。しかしそれ以降、このMasi Okaの発言は頭の片隅に残り続け、バンザイというのは私にとって使うのが後ろめたい言葉になった(もっとも使う機会は滅多にないが)。だから客席からバンザーイという声が上がったとき、私は叫ぶことが出来なかった。

動画の後にステイジに出てきたJuice=Juiceは、しみじみと喜びを噛みしめているような、何とも言えない表情をしていた。“Wonderful World”の冒頭で高木さんは涙で歌詞が詰まっていた。他のメンバーも涙ぐんでいた。宮崎さんは、(ステイジに出てくる前に)皆さんがバンザイと言っているのが聞こえたと言った。するとまたその場でバンザーイ!バンザーイ!の合唱が起きた。私はMasi Okaの呪縛を一時的に捨て、一緒に参加した。宮崎さんはジーンと来たような表情を見せた。さすがに宮崎由加さんが喜ぶとなるとやらないわけにはいかない。植村さんは「私たちの幸せを自分のことのように喜んでくれる人たちがこんなにたくさんいる」とゆっくり言葉を紡ぐように話していた。高木さんは「こんな詰め詰めのスケジュールじゃJuice=Juiceが壊れちゃうと心配してくれる人もいた」とファンへの感謝を口にした。金澤さんは「これまで色々あった。私の病気の発表もあった。220公演のすべてに参加できていない私が武道館に立っていいのか」と泣きながら吐露した。立っていいに決まっている。宮本さんは「武道館という目標に向かって、ファンの皆さんも含めてここまで一つになれているグループはJuice=Juiceだけ」と誇らしげに笑顔で語った。℃-uteが辿ってきた道だ、と私は思った。グループが継続して輝いていくためには、武道館公演を成功させた後の方向性や目標をうまく定めないといけない。でもそんな心配はもう少し後になってからでいい。Juice=Juiceもファンも、今は勝利の美酒に酔うべきだ。

私にとっての勝利の美酒は、終演後まっすぐに向かった「李苑」で頼んだ黒ホッピーだった。ホッピーはうまいし糖質が少ないから注文したと言うと、先に店に入ってビールを飲んでいた友人は「Juice=Juiceを観てきたのに糖質を抑えたいのか?」と聞いてきた。私は「糖質はジュースでたっぷり摂ったから控えたいんだよ」という完璧なアンサーを返した。キムチ、ホルモン5点盛り(コプチャン、ギャラ、ハツ、豚ガツ、ドーナツ)、トッポギ、スペシャルチヂミ、豚トロ、ツラミ、レバー。味噌ダレにまみれたホルモンとホッピーの相性がこれ以上ないほどによかった。