2017年4月7日金曜日

NEXT ONE (2017-04-01)

2時間は長いと飛行機に乗る前には思っていたが、疲れたな、眠いな、と思いつつ、うとうと、ぼんやりしているうちに福岡に着いた。持ってきた『仕事と日本人』は数ページしか進まなかった。生産的なことをロクにしないまま何となく時間が過ぎる。まるで仕事のようだ。天神駅のコイン・ロッカーに旅行カバンを預けて、福岡Drum Be-1へ。グッズ販売が始まった11時過ぎに会場着。私がグッズ列に加わった数分後に急に10人以上が後ろに並んできた。自分の番が来るまで誰の日替わり写真を買うか迷い続けたが、販売員を目の前にして私の口から出たのは「日替わり写真を全員分、1枚ずつください」だった。全メンバーズのを買ったのは初めてだ。後ろの若いナオンが連れに「いいなぁ…」と言っているのが聞こえてきた。あとコレクション生写真を5枚、買った。11時25分。開場まであと2時間。昼飯を食いに徒歩でキャナル・シティへ。天神のストリートで地図を眺めていたらローカル淑女が声をかけてくださって、親切にも行き方を教えてくれた。Twitterの博多民が勧めてくれた「天ぷら たかお」。たかお定食980円。思っていたより全然よかった。天ぷらは揚げ立てが都度、目の前に提供される。明太子が取り放題。

なるべく身軽になりたかった。背負っていたヘルメット・バッグ。預けようとした天神駅のコイン・ロッカー。すべて埋まっていたので断念。福岡Drum Be-1に着いたのが開場時間の10分前くらいになって、ちょっと焦った。この時点で既に観客は番号順に並ばされていた。並び方を指示していたバイト・リーダー的な若者にクロークはあるのかと聞いたら入場した後にあるという。それじゃ誰も預けない。入ったらみんな我先にと前に急ぐからね。開場前に預けられるようにしないと。それはまだいいとしても、客の並ばせ方が適当すぎた。客同士で確認して勝手に番号順になっといてっていう感じ。私の番号は5番で、ちょうど列の5人目だったのだが、前には番号が後の人が何人かいた。あくまで大雑把に番号の塊ごとに人を分けているだけかと思っていたら、番号を呼び出すこともなく適当に作られた列をそのままの順番で中に入れていた。仲間と組めば簡単に不正ができる。仲間がいなくても、良番保持者の体で前の方に紛れ込めばそのまま潜り込めただろう。

前の日から博多にいたかった、本当なら。その方がゆとりを持って過ごせるから。移動が当日だと、何かの理由で飛行機に乗れなかったらおしまいだ。昨日は金曜日。普通に仕事があった。私の仕事場は埼玉の奥地。働いてから羽田に向かう、それは全休とは言わずとも半休を要する。普通の金曜日ならそうする。3月31日は普通の金曜日ではなかった。年度末、最終日。売上の締め、棚卸。休むわけにはいかない。午後半休の取得でさえ、会社における私の信用に関わりかねない。だから当日の4月1日に飛行機で羽田から福岡に飛ぶことにした。8時10分発。所要時間は約2時間。開場は13時半。あまりギリギリに着きたくなかった。グッズも買いたかった。これくらいの時間が遅すぎず、早すぎずかなと思った。ちょうどグッズを売り始めた頃に会場にたどり着いたので、読みは完璧だった。心配だったのが、朝。その時間までに羽田に着こうとすると5時くらいには起きないといけなかった。普段の平日は6時にアラームをかけて6時20分頃にもぞもぞと布団から起き上がる。土曜日に5時にスパッと起きられる自信がなかった。だから3月31日は羽田の近くに泊まった。蒲田駅の近く。職場はバタバタしていた。16時前に会社を出た、半ば強引。そこから行った病院。花粉症のクスリをゲットして、不動産屋に行って物件を見て引っ越しを決めて入居の申し込み。いちど帰宅してコンビニ飯を食って荷造りをして、そこからまた家を出て、22時半頃に蒲田のホテルに着いた頃にはヘトヘト。ホッとする暇もなくホット・シャワーを浴びる気力もなく、歯だけ磨いて寝た。今朝、5時45分と6時に仕掛けておいたiPhoneのアラームで起床。じわじわと溢れてきた喜び。寝坊をしなかった。これで私は8時10分の飛行機に乗れる。福岡に行ける。Juice=Juiceのコンサートを観させてもらうことが出来る。本当に楽しみで、楽しみで…。

Juice=Juiceの単独コンサートを前に観させてもらったのは昨年の11月7日。あの武道館公演だ。12月にはFCイベント、1月にはハロコンで彼女たちを目にしていたが、単独コンサートに限れば実に約5ヶ月ぶり。2月の新宿での2公演もファンクラブ先行で申し込んでいたが、外れていた。もちろん私はつばきファクトリーにもマジ興味ある。でも現在のハロプロで一番のグループはJuice=Juice。FCイベントもいいが、彼女たちの真骨頂が発揮されるのはコンサート。ハロコンもいいが、他の出演者がいない彼女たちだけのステージは特別だ。私に生きる意味がいくつかあるとするとJuice=Juiceの単独コンサートはその筆頭に属する。それを5ヶ月もお預けされてようやく観に行かせてもらえるとなると、否が応にも期待が高まる。その上、アップフロントが物凄い番号をくださった。昼公演が5番、夜公演が106番。昼公演は最前で観られる。ライブハウス(和製英語)の至近距離で、間に誰も挟むことなくJuice=Juiceを脳に刻むことができる。昨年の6月に横浜で体験して以来、二度目の僥倖である。あのときに分かった。別世界だ。夜の106番というのも、そんなに悪くはない位置に行けるだろう。こんな番号をいただければ、埼玉から福岡に行く甲斐があるというものだ。極めつけが、『地団駄ダンス』というドープな新曲。先週末(3月25日・26日)のひなフェス2017が、現場での初披露。Twitterでは何かと騒ぎになっていた。コミカルな曲らしい。これまでのJuice=Juiceとは路線が違うらしい。多くのファンが抵抗を示しているらしい。私は4月1日まであえて耳にしないつもりだったが、3月29日のハロ!ステを開いたらいきなり冒頭に流れてきた。私の第一印象:乗り方が難しそうだが、ありなのでは。その後、何度も繰り返して観ていくにつれ「どんどん」好きになっていた。『地団駄ダンス』を生で観るのを想像すると(セットリストに入るという保証はなかったが)ワクワクした。

本当にチケットの番号どおりに入場をしていれば、私は2人くらい前に入れていただろう。でも、そんなのはどうでもよくなった。なぜなら、仮に一番目に入っていたとしてもここを取っていただろうという最高の位置を確保することができたからだ。ステージのいちばん前に二つ置いてあったお立ち台の、右側(上手)の、真ん前。お立ち台がない場所にはスピーカーが設置されていた。つまりJuice=Juiceを最も近くで観させてもらえるのがお立ち台の前なのだ。ついにここまで来た。ここに来るのをどれだけ心待ちにしてきたことか。人生でそう何度と味わえることのない、刺激的で奇跡的な時間が始まることが、約束されていた。左右を見渡すと、左側(下手)の女性限定エリアを含めて、最前に陣取る幸運に恵まれたのは15人くらい。私は右から6人目だった。金澤朋子さんの影アナを経て、ついに始まった。

Daniel Gilbertの“Stumbling on Happiness”によると、人間は過去に味わった感情を正確に思い出すことが出来ない。その出来事が起きる前に抱いていたこう感じるだろうという予想や、こう感じたに違いないという理論に引きずられた記憶を脳が作り上げる。これを書いている今は、4月4日の20時10分。会社から家に帰る電車の中だ。ここにしたためているのはリアルタイムの感情ではない。コンサートは過去の記憶だ。Daniel Gilbertに言わせれば正確な述懐ではない。たしかに、そのときの気持ちをそっくりそのまま再現することはできない。それでも私は自信を持って言える。人生でこれ以上の幸福はないと、私は心から感じていた。甘美で贅沢な体験に、圧倒され、恍惚としていた。この記憶に間違いはない。100点を幸福の上限とすると、期待が100点で、実体験が100点で、記憶も100点だった。ライブハウス(和製英語)の一番前に立ち、すぐ目の前で繰り広げられるHello! Projectのスターたちによる歌唱とダンスに酔いしれる。これは当事者になってみないと理解しがたい類の悦楽である。何十回コンサートを観させてもらっても、最前にいるときの感覚は最前に行かないと分からなかった。

明日、宮崎由加さんが23歳になる。彼女のバースデー・イベントは、今年はお誕生日の当日に東京のTFT HALL 1000で開催される。私はあさってまで福岡にいる。だから今日のコンサートは、私にとっては宮崎さんのバースデー・イベントを兼ねていた。福岡と東京の距離を考えると、会場にいた宮崎さんのファンの大半にとっても同じだっただろう。昼公演ではサプライズで宮崎さんを祝う場面があった。ある曲の直前に植村あかりさんが後ろに捌けた。異変を察知した宮崎さんが前の宮本佳林さんの肩?背中?を叩いて、まだ曲に移ってはダメだと必死に伝えた。宮崎さんはこれでトークを引き延ばすつもりだったが、そこで植村さんがケーキを持って後ろから出てきた。ろうそくが消えそうだったようでJuice=Juiceの皆さんは焦り、我々はハッピーバースデーの歌を倍速で歌った。後に植村さんが一人で少ししゃべるセグメントで、宮崎さんのお誕生日に言及していた。「私は23という数字が好き。3はそんなに好きじゃないんだけど…。その次に1230が好き。自分の誕生日にも23が入っている」「ケーキおいしそう。チョコレートがまんべんなく振りかけてあって。後でちょうだいと由加に言ったらいいよと言ってくれたので食べるのが楽しみ」。植村あかりさんは日替わり写真にも「明日はゆかの23歳の誕生日!!!『23』もゆかもだーいすき。」と書いていた。昼公演のアンコールは「ゆかにゃ! ゆかにゃ!」だった。Juice=Juiceが再登場した際に「凄いね」とマイクを通さずにメンバー同士で(たぶん言っていたのは高木紗友希さん)言っているのが聞こえた。おそらくみんなライトの色をピンクにしていたんだと思う。私はいちばん前にいたから分からなかったけど。私は明日のイベントには行けないので、こうやって宮崎さんのお誕生日を祝うことが出来て嬉しかった。

Juice=Juiceの単独コンサートでは初めて披露される『地団駄ダンス』の目撃者になれた、それも最前で、というのは本当に光栄だった。ひなフェスでそんなに盛り上がらなかったというストリートの噂をTwitterでは目にしていたが、福岡Drum Be-1ではそんなことはなかった。次は『地団駄ダンス』をパフォームするとJuice=Juiceが宣言すると、待ってましたという感じのヴァイブスが、ヘッズの歓声から伝わってきた。遊び心に満ちた歌詞、メロディ、アレンジ、転調。弾けまくるJuice=Juice全員の笑顔。激しくもユーモラスな振り付け。目が釘付け。この曲をハロー!プロジェクトでもトップ・クラスの歌唱とダンスのスキルを誇る、正当派のグループである彼女たちがパフォームしていることに意味がある。一見ふざけたような曲だからこそ、Juice=Juice一人一人の歌唱とダンスのスキルが凄くしっかりしているのが分かる。我々は既に曲中に声を出していた。「ジダダ・ダンダンス・ジダダンダンス」の後に「オイ!」、「じだんだ・じだんだ・じだんだ」の後に「どんどん!」。その二箇所。Juice=Juiceの皆さんは後のトークで「どんどん!」をやる我々を褒めてくださった。「ひなフェスのときにもやってくれた人はいたんですけど、やってくれない人もちらほらいて…」と愚痴る植村あかりさん、ドッと沸く会場。

私は生で体験して『地団駄ダンス』がますます好きになった。℃-uteに与えられた職安のような芸名の紳士が携わったクソ激安お涙ちょうだいテンプレ感動セルアウトジェイポップ路線にJuice=Juiceが舵を切らなくてよかった! 売れ線を狙ったところで何十万枚・何百万枚と売れるようになるわけじゃないだろ。大衆向けジェイポップでマネーとフェイムをつかむ、そんなドリームは宇多田ヒカル、椎名林檎、aikoで終わったんだよ。だから売上を伸ばしたいという願望を変に楽曲に反映させないで、ひたすらフレッシュで尖ったシットをドロップしてくれ。大体ヒップ・ホップ、ジャズ、ポスト・ロック等々のジャンルに親しみ日々新旧のドープな音に触れている、鋭い感性を持つ音楽愛好家である私に、今さらその辺の学生受けを狙ったようなジェイポップが響くはずがない。あんなんじゃ上がらねえんだよ(そりゃ現場でかかったらタオルを振るけどさ)。我々を馬鹿にするなよ。私が℃-uteへの熱を保てなくなった大きな理由の一つが、ポストつんく期の楽曲が好きではないからだ(好きなのもある)。Juice=Juiceは℃-uteと似ているが、もし職安系の曲をJuice=Juiceのレパートリーに追加するような動きが今後あるとすればそんなフェイクワックA&Rの提案困る。トイレで酔わせた姉ちゃんとやる。あまりに大金払い精出る、資本主義丸出しレーベル。英語ばっか使うむこ…って何の話だ。

私は『地団駄ダンス』とこのコンサートで初めて披露された『Feel!感じるよ』によってポスト武道館のJuice=Juiceに希望を持った。武道館での公演を成功させた後の目標設定とビジョンが大きな問題であることを℃-uteの先行事例から私は知っていた。℃-ute以上に武道館を悲願の目標として突き進んできたJuice=Juiceが、それを成し遂げてからどこに向かって活動を続けていくのか? ℃-uteと同じようにもっと大きな会場で何回かやって、終わっていくのか? それはそれで十二分に立派なのだが、私はしっくり来ていなかった。『地団駄ダンス』のダンスが激しく体力を消耗するから6曲連続のセグメントがこの曲で始まるのが大変であることや、『Feel!感じるよ』に振り付けがほとんどなく、リズムを刻むことも禁じられているのが難しいと説明する中で、Juice=Juiceのメンバーが「課題」という言葉を口にしていた。それを聞いて、そうか、次にJuice=Juiceが目指すのは単純な拡大路線ではなく、表現の幅を広げるために今までとは毛色の違う楽曲に挑戦していくことなんだな、と合点した。夢を叶えて目標を喪失し、次にどこに向かえばよいのかよく分からなくなると終わりの始まりだ。彼女たちが常に何かしらの難しい課題に向き合っていくのは好ましいことだ。植村あかりさんは『地団駄ダンス』をもっと盛り上がるように育てていきたいと言っていた。彼女たちならきっとこの曲をRakimのようにMove the Crowdするまでに高められる。ついて来られるのか試されている我々。理解できないフェイク野郎はバレバレ。

宮本佳林さん曰く、昨日は一人で広島でイベントをやった。明日の福岡来てくれる人?と聞いたら3人か2人しか手を挙げてくれてなかった。広島と福岡は近いのに何でこんなに少ないんだと思ったら、今日(4月1日)は広島でモーニング娘。のコンサートがあることをイベントの後にスタッフさんから知らされた。まあハロー全体が好きな人ならそっちに行くのは分かるよ。私(宮本)だってその立場ならそうするもん。明日は福岡にモーニング娘。が来るらしい。明日も行く人に、Juice=Juiceもこんなところがよかったと思ってもらえるコンサートにしたい。

終演後の高速握手会では、宮崎さんには「明日おめでとう」、高木さんには「地団駄ダンスよかった」(この曲への我々の反応を人一倍、気にしているように見えたので…)、他のお三方には「楽しかったです。ありがとう」と申し上げた。が、ざわざわしていて、私の言葉が彼女たちに届いたかどうかは疑わしい。一人目の宮本佳林さんが、彼女の言葉は聞き取れなかったけど上機嫌でやたらと愛らしい反応をくださった。今日買ったコレクション生写真の一枚が「天使と見るかデビルと見るか…あなた次第。」と書いてある宮本さんの写真だったが、コンサート本編から最後の握手まで、終始一貫して天使だった。やばいよ、この方は。宮崎さんは私の着ていたTシャツを見て「ピンクありがとう!」と言ってくださった。五人目の高木さんは頷いていた。私が何を言っているかは分からないけどとりあえず頷いたようにも見えた。

酒を入れたくなった。福岡Drum Be-1の近くにポプラがあった。プレミアム・モルツの黒500mlとせんべいを買った。ビールを飲んで、せんべいを食った。いい気分になりかけたがビールのアルコホール度数だとまだ足りない。もっと欲しい。「ジュース、もう一杯、ジュース、もう一杯」と叫びながら(それは嘘)再度ポプラに入って、サントリー角ハイボール濃いめ500mlを購入した。夜公演の開場を待ってたむろするジューサーたちを眺めながら、公園の芝に座り込んで、つまみなしで、角ハイボールを飲んだ。天気がよくて気温も過ごしやすい公園で酒を飲むの、いいな。計1リットルの酒を胃に流し込み終えると、最高の状態に仕上がった。缶を捨てるために立ち上がると、少し足がふらついた。コンサートが始まる前から気持ちよすぎる。飲酒してのご観覧は禁止されているが、飲酒しないでHello! Projectメンバーさんの元気さについていくのは無理なのである。

初めて飲んだ開演前に酒1リッター。飲みまくったらハイになった。ハイになったらコンサートがあり得ないくらい楽しかった。のはよかったのだが、それは前半までだった。中盤から、コンサートの楽しさよりも尿意を我慢する苦しさが上回ってきた。膀胱の悲鳴を本格的に無視できなくなってきたときに時間を見ると、18時14分だった。開演したのが17時半。握手も入れると19時半くらいまであるはずだ。あと1時間以上。これはまずい。ここまで我慢できないほどの尿意は、最近では記憶にない。その場でペットボトルに陰茎を突っ込み黄色い液体を中に放出するという考えが何度も頭をよぎった。こうやって文字にすると頭がおかしい発想だが、尿を体内に留めることにすべての脳内資源を奪われ、正常な思考力を失いつつあった。私が獲得した位置は二つ目の段差の一番前、真ん中だった。福岡Drum Be-1はステージが高い上にフロアにも段差が二つあって、とても観やすかった。数メートル先では宮本佳林さんたちが(真ん中にいたので彼女が一番目に入りやすかった)ステージで躍動していた。にも関わらず私の下腹部からの訴えがあまりにもきつすぎて、コンサートが早く終わってくれないかとさえ思い始めた。開演前の酒は500mlでは少なかったが、1リットルは多すぎた。しかも何を血迷ったのかその後に水を400mlくらい飲んでいた。ビールとハイボールの350mlを一缶ずつくらいに押さえておくべきだった。もしくは角ハイボール濃いめだったら500ml×1だけでも足りたかもしれない。可能であれば飲酒のタイミングもトイレに行けるように余裕を作っておくべきだった。本編が終わったところで前から一人の紳士が後退してきた。それに便乗して(その紳士が道を作ってくれたので)私も後ろに下がった。アンコール後の曲はこの位置からは観られないが、3曲だから諦めることにした。Juice=Juiceを目に焼き付けたいという私の思いが尿意に敗北を喫した瞬間である。いちばん後ろに階段があって、2階にコイン・ロッカーとトイレがあった。夜のアンコールはゆかにゃではなく「ジュース!もう一杯!」だった。いざ小便器の前に立つと、飲んだ量の割には、そんなに大量に出たというわけでもなかった。たったこれだけの量の液体を体外に排出できないためにあれだけの苦しみを味わったというのが恨めしかった。最後の3曲はいちばん後ろから観た。いくら視界のいい会場とは言ってもさすがにここでは見づらかった。それでも近くの宮本佳林ファンが一生懸命声を出しているのが立派だった。終盤のトークではMOL(ラッパーのmol53ではなくて“Magic of Love”の略)の最中にお化けが見えたという話を宮崎さんがした。実はそれは他のメンバーが口裏を合わせてドッキリを仕掛けていたんだと高木さんが明かし、宮崎さんはショックを受けていた。

今日の2公演(といっても2公演目は気もそぞろだったが)を通して、私の植村あかりさんへの印象が変わった。飛び抜けた美人ではあるものの他のメンバーに比べると表情の種類が少なくて、ちょっとツンとしていて、機嫌に波があるという印象を私は持っていた。今日の彼女は表情がとても柔らかくて、以前に私が(勝手に)感じていたトゲがなかった。最近はトーク中にキレないしね。キレるのも面白かったけど。植村さんが人間的に丸くなった(というのも私の勝手な決めつけだが)ことで、Juice=Juiceはますます成熟したグループになったと思う。

終演後に中州まで歩いてTwitterの博多民強く推薦のラーメン屋「海鳴」で夕食を摂った。酒が残っていて、頭が正常に機能していない。壁に貼ってあるメニューの漢字が読めず、「えーっと、いちばん右の…」という頭の悪い頼み方になった。「ぎょかいとんこつラーメンですね?」と確認する店員。自分が「魚介」という文字が読めなかったことに愕然とした。硬さはと聞かれてよく分からなかったので普通で、と私は答えた。スープは一口飲むと気持ちが安らぐ味わいがあった。麺は追加せず、会計を済ませて店を出た。バリカタって言って替え玉も頼むのがリアルなストリートの作法だったのかな? 店内に貼ってあった求人には月給23万円と書いてあった。iPhoneを取り出して、計算機に「23×12=」と打ち込んだ。仮に残業代とボーナスが出なければ年収276万円か。屋台が立ち並ぶ博多の風景を目に焼き付けながら、今日の寝床がある二日市のホテルに向かうべく、天神駅まで歩いた。2公演目はまともな理性を伴わない鑑賞となってしまったが、今日の総括としては、Juice=Juiceがこの世で最もイルな集団であるのと『地団駄ダンス』が最高であるという、この二点は間違いないと私は言える。