2016年11月13日日曜日

LIVE MISSION FINAL (2016-11-07)

鼻毛を切りました。電動の鼻毛カッターというのが世の中にはあってですね、うちの洗面台に一つ置いてあるんです。パナソニックのER-GN50-W11。身だしなみの一環です。いくら清潔にしてファッショナブルな服を着ても、おけけが鼻からこんにちはしていたら台無しですからね。そりゃ手入れせなあかんですよ。廃墟の庭ちゃうねんから。手入れって言っても髪の毛にやるようにコンディショナーを付けるとかそういうんじゃなくて、出入り口付近の余分な毛を刈り取るんです。芝刈りと同じ要領です。しばらくやらないと露出しますからね。しばしばというよりは不定期にカットしています。そこまで伸びるもんじゃありませんので。実際、目に付くほど伸びていた訳じゃないんですけど、鼻毛も切っておこうという考えが勝手に頭に浮かんで、勝手に身体が動いたんです。朝にお風呂に入って、顔を洗って、身体を洗って、ヒゲを剃って、髪の毛を整えました。そこまでは普通でしたけど、最後に鼻毛も切らなきゃと思ったときに、今日は特別な日なんだなという実感がふつふつと沸いてきました。4日前には、髪を切りました。前髪がうるさくなって横も膨らんできていました。普段であればあと1週間くらい放置していたかもしれません。

宮崎由加さん、宮本佳林さん、金澤朋子さん、高木紗友希さん、植村あかりさん(順不同、ではなく私の推し順)の5人が老後に生涯を振り返るときに、2016年11月7日(月)という日がハイライトの一つになるのは間違いありませんでした。それはもう、自明(self-evident)でした。というか、なる、じゃないんだよ。そうなるのを受け身で待つのではなく、そうさせるのです。彼女たちが一生忘れられない思い出を作り出す一員になるのです。彼女たちが一生忘れられない景色の一部になるのです。彼女たちが一生忘れられない歓声の一部を出すのです。Juice=Juiceが目標であった日本武道館での公演を達成する姿を観客として見届ける、という生ぬるい気構えではありませんでした。我々も参加者なのです。今日という一日が宮崎さん、宮本さん、金澤さん、高木さん、植村さん(順不同、ではなく私の推し順)にとって人生最良の思い出の一つになるのか、苦い思い出になるのか。それは我々にもかかっているのです。その強い決心を胸に、家を出ました。それは私の個人的な思いというよりは、我々の集合意志だったはずです。

私は10月の中旬から下旬にかけて仕事でヨーロッパに行っていましたが、この日程には私の狙いがありました。11月7日の直前に海外出張を入れておくことで、11月7日に新たな海外出張が入るのを防ぎたかったのです。私の上司は人道的なので、私の体調に配慮してくれます。海外出張から戻ってきた直後にまた次の海外出張に行けと命じてくる可能性は非常に低いです。(海外出張をバカンスみたいに思ってる奴がたまにいるねんけど、長旅は疲れるし何より時差ボケがめっちゃきついねんで。)それを見越して、自分で日程を決めて出張を仕掛けたのです。もちろんその日程が同行者と先方にとって都合がよかったというのが前提ですよ。私は普段からハロー!プロジェクトの公演を観られるように仕事のスケジュールを調整しているのですが、11月7日に関しては特に入念にやる必要がありました。失敗は許されませんでした。絶対に、絶対に、絶対に失敗はあり得ませんでした。ダメ。ゼッタイ。世の中に絶対はないとしても11月7日の18時までに日本武道館のアリーナ席にいるのは絶対でした。その場にいたいのではなく、絶対にいるのです。それはもう、5月4日のコンサート中に武道館での公演が決定したという知らせを受けた瞬間から決めていましたし、譲れませんでした。

日本武道館での公演を成し遂げるのは、Juice=Juiceにとって大きな夢でした。記念日としての結成日やメジャーデビューの日は、グループが存続する限り、年に一度はやってきます。大きな夢が叶う日というのは、そもそも一度でさえ訪れる保証がありません。だから大切で、貴重だったのです。武道館での公演実現を目指して全国各地を回って1年強で220回の単独コンサートを行うという狂ったコンセプトのMISSION 220というツアー。2015年6月21日の横浜を皮切りに、2016年10月29日に沖縄にて目標を上回る225公演をやり遂げるという形で、彼女たちは走り終えました。2015年5月にMISSION 220の実行を宣言してからは、Juice=Juiceの活動すべてが日本武道館という目標に向かっていました。その目標に向かって、ファンも含めて一丸となっていました。225公演のうち、私が観させてもらったのは21公演でした。全部の1割にも満たないという、本当にささやかな参加数でした。


中には225公演のうち100回以上とか、200回以上も入った方々がいるそうで(Juice=Juiceのメンバーたちがブログ等で言及していました)、そのような正真正銘の猛者たちを前にすれば、私の参加の仕方なんて本当に可愛いものでした。それでも自分はMISSION 220に参加してきたんだからツアーの集大成としての日本武道館公演には必ず入りたいと思うには十分な回数でした。特に、遠征が印象深いですね。このツアーを観させてもらうために山口県、愛知県、滋賀県に行きました。Juice=Juiceの現場に行かせてもらうまでは遠征というもの自体、やってきませんでした。普通に考えて、東京近郊に住んでおきながら、わざわざ地方の現場に行くのはおかしいんですよ。現場は東京近郊で十分にあるはずなんです。それにチケット代以上に交通費と宿泊費がかかります。遠征にかかる費用を突っ込めば、転売市場で相当にいいチケットが手に入りますからね。でもMISSION 220で3回の遠征をしたことで、近場での公演を観に行くのとは違った楽しさがあることを知ってしまいました(2014年11月にもJuice=Juiceをコンサートのために新潟に行っていて、それが私にとって初めての遠征でした。MISSION 220の前でした)。MISSION 220がなければ、山口県、愛知県、滋賀県といった辺境の地には一生、足を運ばなかった可能性があります。そういった土地に足を踏み入れ、現地の空気を感じることが出来たのは喜びでした。

ハロー!プロジェクトのコンサート・グッズには、その当日に会場でしか買えない日替わり写真というものがあります。メンバー毎に一種類ずつ。MISSION 220に入る度に、必ず一枚は買ってきました。日替わり写真を買うという習慣も、MISSION 220で身に付きました。(それ以前にも買ったことはありましたが、コンサート参戦の恒例行事のようになったのはMISSION 220以降です。)A5サイズとはいえ1枚の写真が500円するのが理解できなかったですし、それを買うために列に並ぶのもだるすぎました。その正常な感覚はMISSION 220によって失ってしまいました。今日という特別な日の写真は是非とも手に入れたかったです。丸一日の休みを取っていたので、早朝からグッズ列に並ぶことも可能でした(販売開始は12時半でしたが、実際にはもっと早くから列は出来ます)。でも私はそうしませんでした。二つの理由がありました。第一に、万全の体調でコンサートに臨みたかった。ちゃんと寝て、ゆっくりお湯に浸かって、ちゃんとお昼ご飯を食べて、体力と気力を残した状態で夜を迎えたかった。第二に、前日に観させてもらった『ネガポジポジ』の感想をブログに吐き出しておきたかった。語っていない現場をなくして、頭がすっきりした状態でJuice=Juiceの武道館公演を迎えたかった。池袋で昼飯(「四季海岸」で回鍋肉定食)をいただいてから九段下に行って、13時過ぎにグッズ列を見に行ったのですが、想像以上の長さでした。3-4時間かかりそうに見えました。コレクション生写真は売場が別になっていて、ほとんど並ばずに買えました。ひとまずそれでよしとして、日替わり写真は諦めて、PRONTOに避難しました。コーヒー290円と小さなキットカット50円を買って、ブログを書き上げました

結局、日替わり写真は15時前には全員分売り切れていたようです。グッズの販売開始が12時半だったのですが、おそらくその2時間前には列に入っていないと買えなかったんじゃないですかね。スパッと諦めたのは結果的によかったです。11月3日の『ネガポジポジ』のブログが書けたのも大きかった。それが出来ていなければ、今(11月12日の16時42分)11月7日のブログは書けていなかったと思います。とはいっても正直すこし悔しかったのですが、ここで前日の夜(11月6日21時44分)に投稿された宮崎由加さんのブログを思い出しました。
映画館にいるかたも
BSスカパー!からご覧の方も
武道館にいると同じです。
映画館にいるのが武道館にいるのと同じ。ということは、映画館会場の日替わり写真は事実上、武道館の日替わり写真と同じ。数学的に考えてそうなることに気が付いた私は、名古屋の映画館からライブ・ビューイングでコンサートに参加するTwitterのダチに頼んで、映画館会場の日替わり写真を買っておいてもらいました。宮崎さん、宮本さん、金澤さんの分を買ってもらいました(後で気付きましたが映画館の日替わり写真はネット通販でも買えるようになっていました)。そのダチ曰く、映画館では写真を買っている人がほとんどいなくて、売り切れてもいないとのこと。九段下との温度差には笑ってしまうほどでした。それはさておき、完璧に準備が整った状態で開場時間の17時になりました。朝から入浴。髪を切ったばかり。鼻毛まで行き届いた身だしなみ。体調は最高。グッズ列に並んでいないから消耗していない。昼ご飯もしっかり食べて…あ、そういえば回鍋肉定食に加えて滋養強壮に効くというアルコール42度の参茸酒を一杯、煮卵を三つもいただきました。その上、ブログまで書いたので余計な宿題を抱えずに、ただ目の前のコンサートを楽しめばよい状態に持ってくることが出来ました。

入場列に並んでいると、MISSION 220でよく見た紳士がいて、つい顔がほころんでしまいました。その方と話したことはない(私は現場には基本的に一人で行って誰とも交流はしない)のですが、戦争を生き残った仲間のような気持ちになりました。あんたも生きてここまでたどり着いたのか、的な。入場口の手前には華々しい晴れ舞台に相応しく色んな人たちから贈られた花々が飾られていました。チケットのもぎりと荷物検査を抜けて建屋の中に入ると、周りの人たちが口々に凄い、凄いと言っていました。何かと思ったら、果物を使った精巧なアート作品のようなものが飾られていました。金澤朋子さんと毎週ラジオ番組で共演している元祖爆笑王さんからの贈り物でした。みんなが花を送るところをこうやって違うことをやるのは人を喜ばせるのが上手であると同時にさすが放送作家を自称しながら前に出てくるだけあって目立ちたがり屋だなと思いました。私の席はアリーナB3の99番でした。アリーナという最前線で戦えるのは嬉しかったものの、番号的にそんなに高い期待は持っていませんでした。ステージを正面に、A1、A2…とブロックが続いていくので、B3となるとだいぶステージからは遠いんだろうな、と。実際にはアリーナの中央に設けられたサブステージに近くて、メンバーたちがサブステージに来たときは近距離でその姿を拝める席でした。

開演直前のJuice=Juiceの皆さんの様子が、コンサートが始まる少し前からLINE LIVEというサービスで生中継されていました。ハロー!プロジェクトのライン・アカウントから16:35に来たメッセージによると17:30頃から配信が始まるとのことでしたが、17:25には17:45頃〜に変更になったというメッセージが来ました。中継をやることを急に発表して、直前に延期して、Juice=Juiceの皆さんも裏方の皆さんもバタバタしているのが伝わってきました。はじめは中継を観るつもりでiPhoneを片手に会場内をそわそわしていましたが、17:45〜となるとつばきファクトリーの前座と重なるだろうし、電池の残量も少なくなっていたので、観るのはやめました。一旦、席を離れて壁際で会場全体を眺めながら身体を伸ばしました。17時45分頃に席に戻りました。つばきファクトリーの前座は小野瑞歩さんと小片リサさんを中心に観ました。開演は少し遅れていました。会場内の時計で18時5分くらいまでは確認していますが、それからさらに数分はたっていました。つばきファクトリーの出番が終わると、会場のモニターにJuice=Juiceの皆さんが映し出されました。どうやら前述のLINE LIVEの中継のようです。間違えたらどうしよう間違えたらどうしようとパニックになる金澤さんを、大丈夫だよとなだめる植村さんと宮崎さん。開演前の音楽に合わせてオイ!オイ!と叫ぶ我々に合わせてリラックスした笑みを浮かべてリズムに乗り身体を揺らして拳を突き上げる宮本さん。メンバーの皆さんの緊張、ワクワクを共有することが出来て、とても臨場感がありました。DVDマガジンや『ハロステ!』のようにこちらが一方的に観るのではなく、向こうが問いかけてこちらがワーってなる掛け合いがあったのでなおさらでした。

Juice=Juiceの初めての武道館公演で、最初に歌声を響かせたのは、高木紗友希さんでした。一曲目を『選ばれし私達』にしたのは、グループの中でも特に歌唱が安定している彼女のパートからコンサートを始めることでグループ全体を落ち着かせたいという意図もあったのではないでしょうか。早々の第一声から音程を外したらその後のメンバーも引きずっちゃう恐れがありますからね(そうは言っても、今のJuice=Juiceに目立って歌唱力に不安のあるメンバーはいないのですが)。先述のLINE LIVEによる中継、我々のオイ!オイ!を誘う開演前の音楽、登場前に各メンバーのシルエットをなぞる電光。場内の興奮と高揚と期待と緊張が頂点に達しました。彼女たちが姿を現した時点で、私は少し涙ぐんでいました。そこで高木さんの歌声が鳴り響いたことで、いつものJuice=Juiceのコンサートが始まったという安心を得ました。それにしても、日本武道館の舞台に立って一曲目が『選ばれし私達』って格好よすぎます。選ばれし私達というフレーズと、彼女たちの状況が、完全にリンクしていました。これまでに彼女たちが辿ってきた道のりを知っている人であれば、まず泣きますよ。

特別なコンサートなのは開演前から明らかでしたが、コンサートが進んでいくにつれ、特別でありながらいつものJuice=Juiceのコンサートでもあることが分かりました。収容人数が300人のライブハウス(和製英語)や2,000人のコンサート・ホールで発揮されていたいつものJuice=Juiceの魅力が、1万人を収容する日本武道館でも、まったく損なわれることなく表現されていました。それを目の当たりにする度に、幾度となく私の目は水分で満たされました。Juice=Juiceは、会場の大きさと、夢の舞台であるという重圧に飲まれることなく、いつもの歌を届けてくれました。もちろんメンバーたちが感極まる場面はありましたが、歌がぶれることはありませんでした。会場が大きすぎるとは一度たりとも感じませんでした。これは紛れもなく、MISSION 220という過酷な試練における彼女たちの行動的禁欲の成果でした。過剰なほどに詰め込まれた現場経験で培ってきた、場慣れした離れ業でした。何かのお祝い、記念日、ご褒美という生やさしいものではありませんでした。日本武道館という箱に相応しいパフォーマンスでした。

MISSION 220とは切り離された何かではなく、あくまでMISSION 220の延長線上にあるコンサートでした。Juice=Juiceはハロプロ内の歴史ある他グループ(例えばモーニング娘。や℃-ute)に比べて持ち歌が少ないのですが、(カバー曲を取り入れて変化を持たせたとはいえ)その状態で225公演をやり遂げたことで、一つ一つの曲に対する習熟度がこれ以上に上がりようがない領域に達しています。これはメンバーたちはもちろんのこと、我々ファンもそうです。どこでどのメンバーが歌ってどういう動きをするのか、我々がどこでどういう声を出すのか。すべてが暗黙の了解です。しばらく聴いていない曲が出てきたときもバッチリでした。ドラマ『武道館』の主題歌となった“Next is You!”ではつんくさんの発案によってある時期からフックの合間に我々が“NEXT IS YOU!”と叫ぶようになりました。我々はそれをちゃんと覚えていました。どんな曲でも、進研ゼミで昨晩やったばかりの問題を解くノリで楽々とこなしていきました。Juice=Juiceと裏方と我々がこれまでに築き上げてきた確固たる信頼関係。オートマティズム。お祭りではなく、これまでに地道に続けてきたコンサートをそのまま拡大・強化して届けるという、現場叩き上げのJuice=Juiceらしい武道館公演でした。特に、高木紗友希さんの、吸い込まれそうなフェイク。宮本佳林さんの精緻に作り上げられたアイドル歌唱。それらは可愛いとか格好いいとかの域を超えて、冷酷でした。夢の舞台にただ立っているだけではない、夢の舞台に相応しいパフォーマンスを見せる彼女たちの姿に、何度も涙が溢れそうになりました。その彼女たちに、我々も十分に応えたと思います。聴き慣れた曲はもちろんのこと、ほとんどの人がまともに聴いたことがないはずの新曲『Goal〜明日はあっちだよ〜』でさえ旧知の曲のように声を出していました。『生まれたてのBaby Love』の間奏での(今までやったことのない)ウェーブもきれいに決まりました(私がスタンド席のウェーブを見る際、後ろを向いたところに関係者席がありました。最前列にいた矢島舞美さんがわーと口を開けて笑いながら手を挙げているのを目撃しました)。極めつけは、二度目のアンコールを受けて披露された“Wonderful World”です。最後に我々が歌う場面があるのですが、我々による歌唱の異常なまでの揃い方と声量。そして宮本さんの咄嗟の判断で我々の歌唱が延長された際の一連のアドリブと阿吽の呼吸は、今後ハロプロ・ファンの間で語り継がれるべき名場面です。

6日もたって未だに泣けるコンサートは、初めてです。これまでに観てきた中で、私にいちばん強い余韻を残したコンサートです。MISSION 220を観てきて本当によかった。Juice=Juiceを応援してきて本当によかった。