2017年8月17日木曜日

Seven Horizon (2017-08-16)

二人がかりで回している縄跳びに一人ずつ加わっていく、集団的な遊びなのか競技なのかよく分からないけど、あるじゃんそういうの。失敗したら一人目からやり直しになるやつ。それに参加していて、縄に飛び込むタイミングを伺うような、そんな気持ちだった。いつ列に入るか、それが重要だ。あまりがっつかなさそうな人の後ろに立たなければならない。濃そうな中年紳士や並んでいる最中からはしゃいでいる女オタクを避けて、地味目な男の後ろについた。ついに俺の番が来た。意を決して一人目の段原瑠々さんに申し上げた。
「俺、今日、誕生日なんだ」「おめでとうございます!」
二人目、梁川奈々美さん。「今日誕生日なんだ」「おめでとうございます。素敵な一年にしてください」
「俺、今日、誕生日」。植村あかりさんは大きな反応をくださった。はっきりとは覚えていないのだが私のTシャツ(ピンクで宮崎と印字されている)を確認しながら「うわー! ハッピーハッピー! おめでとう!」のようなことをおっしゃって左手で私の右二の腕あたりをポンポン叩いてくれた、ような気がする。握手が終わった直後でさえ明確に覚えていなかった。あのな、握手中の俺らってのはそれくらい必死なんだよ。下手すると頭が真っ白になって途中の記憶がなくなるときもあるんだ。分かれ。
「今日、誕生日です」。金澤朋子さん、「おめでとう」
「俺、今日、誕生日」。宮崎由加さん、「おめでとう!」
「今日、誕生日!」。高木紗友希さん、「おめでとう!」

タイミングだけではない。全員に言うかどうか、そこも迷った。はじめは宮崎由加さんだけに言おうかと思っていた。彼女が(つばきファクトリーの小野瑞歩さんと同率一位で)私の一推しなので。今日が誕生日であるという私事を利用して、Juice=Juiceさん全員に祝福を強制するようなことを言うのは厚かましくないか。下衆じゃないか。あとは終演後の握手はあくまで高速なんで、宮崎さんの前の人は無言に近い感じでやり過ごさないと宮崎さんとお話ができない可能性がある。だから宮崎さんだけに狙いを絞った方がいいんじゃないかという考えもあった。逡巡したが、全員に行くという意志を固めた。意志を固めてからの俺は、強かった。昔、宮本武蔵の『五輪書』を途中まで読んだことがあるけど、印象に残った記述があってね。一人で大人数を相手に同時に戦うときでも、今この瞬間においては一人を相手にしていると考えるのが重要だというようなことが書いてあったんだ。目の前にいる敵に集中しろってことだよね。あのときの俺は、宮本武蔵の領域に達していた。俺もマークしていた剥がし要員のことも、俺の前後にいる参列者のことも、いっさい頭になかった。目の前に現れるJuice=Juiceメンバーさんと一対一のやり取りをすることしか考えていなかった。結果として、全員に今日が自分の誕生日であることを伝えて全員から祝ってもらうことができた。実は二年前の今日も、Juice=Juiceのコンサートを観させてもらっていた。そのときにも終演後の握手があったが、メンバーさんに祝ってもらうなんて滅相もないと思っていたし、仮にやろうとしてもあの短時間でうまく伝達することは出来なかっただろう。

小雨のぱらつくさいたま新都心のストリート。さっき抜けてきたばかりの握手会の記憶をiPhoneに書き留める。新鮮なうちに。この脳みそから消えてしまわないうちに。この脳みそが勝手に書き換えないうちに。落としたら割れてしまう卵を安全な場所に移そうとしているような、そんな気持ちだった。

Juice=Juiceの皆さんから(半ば強制とはいえ)お祝いの言葉をかけてもらったことで、誕生日というものに対する私の見方が少し変わった。自分が歳を重ねることは、そんなに嬉しくなかった。そりゃさ、子供の頃は歳を重ねることは喜びに満ちていたよ。誕生日パーティなんか開いちゃったりして。プレゼントをもらって。でも三十も半ばになると、年齢を重ねるというのはどっちかというとネガティヴな出来事になってきてね。子供が大人になるというフェーズだとワクワクするけれども、大人から老人になるというフェーズだとね、あんまりいいことは連想できないわけですよ。体力はどんどん減っていくだろうし、頭も回らなくなるかもしれない。社会保障という面でも、現時点でさえ年金制度が破綻しつつあるのに、俺らが老人になる頃には存続していると想像しづらいわけで。加齢の延長線上にある未来に思いを馳せると、無邪気に喜べない。ただ淡々と受け入れるだけという心境になってくる。でも、Juice=Juiceの皆さんがぱーっと明るく祝ってくれて、誕生日ってのもいいモンだなと思えたんですよ。嬉しかったから、俺も他人の誕生日はちゃんと祝ってあげなくちゃなって思えたんだ。よう知らん奴でも、目の前にいたら祝ってあげるのが人として大事なんとちゃうかなって気付かされた。だって植村あーりーさんなんて、自分以外のメンバーのTシャツを着てる知らない奴に対してもあんなに大げさに祝福してくれたんだよ。いや、仕事なのは分かる。でも凄いじゃん。彼女の日替わり写真を買わなかったのが申し訳なくなった(今日は宮崎さん、金澤さん、宮本さん、高木さんの四枚を買った。誕生日だから多めに)。

ツアーの日程が発表された時点では、私はこの日の公演に乗り気ではなかった。いくつか理由はあった。
・前後の週末はハロコンで埋まっているから現場は足りている。
・この会場にはよくない思い出がある。前に来たのは2015年8月27日。アンジュルム。私がこのブログを始めてから記事にしていない唯一(たぶん)の現場である(接触会を除く)。私にとって後味の悪いコンサートだった。どう書けばよいのか分からなかった。いま同じ状況になったら書ける。当時の私の技量では、必要以上に批判的になっていただろう。
・この会場(HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3)は、観づらい会場として私の記憶に残っている。整理番号がよくないかぎりは満足のいかないコンサート経験になる可能性が高い。
最後の最後に考えを改めて、ファンクラブ先行受付の締め切り間近に8月16日の公演に申し込んだ。15日にも同じ会場であったがそっちはパス。私にとっていちばん幸せな時間であるJuice=Juiceのコンサートを誕生日に味わう機会を逃す手はないな、と思い直した。

番号は64番という悪くない番号をいただくことができた。しかし、俺としたことが、やってしまった。右が少し空いていたのでそちらに立ったところ、最前の右から二番目にあいつがいたんだ。180センチくらいの身長、長い手足、高い跳躍力を生かしてジャンプしまくる金澤朋子さんのファン。そいつの後ろに、迂闊にも行ってしまった。彼が整理番号5番くらいで入っていくのは確認していたんだが。もし気になるようだったらTwitterで「三大迷惑マサイ」で検索してみ。画像は出てくるし、そこのニックネームも入れてGoogleで検索していけば本名も分かるよ。俺は彼を避けられるときには避けるようにしているし、この世界じゃ「有名人」だ。冒頭に宮崎由加さんから、埼玉出身ということでコメントを求められた金澤朋子さんが「後ろの人の迷惑にならないように楽しんでいきましょう」と言っていた。ちょっと顔がこわばっていた。口調は優しいけど少し怒っているような感じだった。たぶん最前の彼が目に入って、牽制したんだと思う。でも少なくとも彼自身は、自分に向けられた言葉としては受け止めていなかったようだ。両手に三本ずつのサイリウムを持って、無駄に高いジャンプを繰り返していた。とにかく過剰なんだよ。あとは金澤さんに向けてサイリウムを動かしてハートの形を作るキモい動きを続けたりとか。まあキモいのは来場者がみんな一緒だからお互い様だけどさ。彼のことを何度か見てきた俺でさえ、ここまでやるのかってどん引いた。最前であれをやる意味がまったく分からない。いちばん後ろなら分かる。何がやばいって、常軌を逸した鑑賞方法もさることながら、自覚がないっぽいんだよね。迷惑であるという。100人いれば99人は嫌がる行為であるのを分かった上で、そんなもんくそ食らえ的に、露悪的にやってるんだったらまだ理解できるんですよ。暴走族みたいにさ。でも違うでしょ彼は。しかも公演中に三回くらい係員から注意されたのにいっさいやめない。何か言い返して揉めてる。終演後にもお仲間に俺がやっていたのは過剰なジャンプではないだとかグチグチ言っていた。たぶん天才なんだと思う。脳の仕組みが常人とは異なる。出演者、係員、他の観客、全員に対する敬意がゼロ。人間としての良識や言葉による注意が通じない相手には多少、暴力的なやり方が必要だよ。BONDSのような。他人を尊重できない人は、他人から尊重されなくても仕方ないよ。

俺は最近、会社でメンタル・ヘルスの講習を受けた。そこで学んだことでなるほどと思ったのが、管理者は部下の行動だけを問題にしろってこと。精神的な疾患の有無や病名についてはお前らが判断はするな。お前らは医者でなはい。診断する資格はない。そこは産業医に委ねろと。たしかにそうなんだよね。ちょこっと本を読んだりセミナーを受けてかじった知識で他人に病名のラベルを付けちゃいかんよな。それを知った上でも、彼には何らかの精神疾患があるんじゃないかと疑わざるを得ない。どういう仕事についてどうやってこの社会で生活しているんだ。十中八九、いやもっと高い確率で、金澤朋子さんはあなたのことを嫌っているよ。それにも一生、気付かないんだろうね…。

以前の俺だったら気分を害してしまったかもしれないけど、この日の俺はひと味違った。5月8日から始めたマインドフルネス瞑想。一日5分とか10分とかを積み重ねて、通算20時間近くになった。2ヶ月くらいで効果を実感し始めた。この習慣を取り入れる前と比べて自分の感情が安定してきたように感じるし、デフォルトの精神状態が「普通」ではなく「いい気分」になってきた気がする。最近はそれに加えてカラダ・ファクトリーで身体の歪みを矯正していることが、精神的な安定に寄与していると感じている。今の俺は、いちいち感情的にはならない。思わぬ障害物が現れるという問題に対して、身体の向きを調整してなるべく彼が視界に入らないようにコンサートを楽しむという対策を取った。彼がいた右端エリアはほとんど見ない格好にはなってしまったけど、割と前の方だったから視界としてはよかった。ステージの中央をずっと見続けた。

地元の埼玉ということで金澤朋子さんが生き生きしているように見えた。今日は一番、彼女に目が行った。アンコールが「朋子! 朋子!」だったことにご満悦の金澤朋子さん。彼女曰く、埼玉は東京に近いし、地元感があまりない。皆さんも「朋子!」なのか「ジュース! もう一杯!」なのか、迷っている感じが伝わってくる。埼玉での公演が二日あると、初日は「朋子!」で二日目は「ジュース! もう一杯!」に戻ったりする。私から「朋子!」って言ってとは言えないじゃないですか。だから「『朋子!』コールしてもらえて嬉しかった」と(ブログで?)強調したりして、皆さんが「朋子!」と言ってくれるように仕向けている」。「次回以降、好きなようにしてくれていいですが…」と強制ではないのを強調しつつも、埼玉で公演があるときはチャントは「朋子!」にしてほしいという強い希望が伝わってきた。

その他
・影アナは段原瑠々さんが担当した。彼女のブログによると初めてだったらしい。たどたどしかったが一生懸命読もうとしているのが健気だった。何卒を「なにそつ」と読んで我々の笑いを誘った。最後の方にも読む箇所を間違えて「間違えた」と言って読み直していた。
・序盤の曲で、植村あかりさんと向き合ったときに何度も左目を閉じてウインクをする高木紗友希さん。
・段原さんの所信表明:朝からおいしいものをたくさん食べた。すべて消費するくらい頑張りたい。
・梁川さんの所信表明:今日は髪を巻いた。念願だった。宮崎由加さんにコテを借りて、段原瑠々ちゃんに巻いてもらった。メンバーの全面協力を得た。
・植村さんによると、昨日は大阪から移動だった。段原さんと梁川さんと集合が一緒だった。(大阪では降っていなかったので)植村さんは傘を持ってこなかった。昨日は段原さん、今日は梁川さんが傘に入れてくれた。
・最近、金澤さんのお尻をみんなで触った。どれだけ硬くなるか。宮本佳林さんはカッチカチになる。植村さんはあまり硬くならない。宮崎さん曰く、宮本さんはよく背筋を触るように要求してくる。「(私はお尻ではなく)背筋担当なのかな」。
・段原瑠々さんは、筋トレはしていないが、元陸上部なので脚の筋肉がご本人曰く「異常です」。あ、本当だ、凄い、と他のメンバーズ。
・梁川奈々美さんの歌声が、宮崎由加さんのそれに似ているように私は感じた。何度か間違えてしまいそうになった。
・本編最後の『KEEP ON 上昇志向!!』、初めて聴いたときから好きだ。コンサートの定番になりつつあるのが嬉しい。『誤爆~We Can't Go Back~』もそうだが、マイケル・ジャクソンのオマージュ的な要素があるとすぐに好きになってしまう。少年時代の私はマイケル・ジャクソンばかり聴いていたので。
・段原さん曰く、昨日のMCで梁川さんがJuice=Juiceになってから一ヶ月がたったと発言した。それを聞いて、一ヶ月たったんだと気付いた。この一ヶ月は、瑠々には刺激が強すぎてついていくのが大変。だけど武道館もあるし、海外ツアーにも参加させていただくし、頑張っていきたい。
・金澤さんの背中の汗、脇汗。
・この会場は、近くにさいたまスーパーアリーナが見える。あれから二ヶ月か。感慨深い。